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病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news (https://www.daitoku0110.news?utm_medium=podcast)
- Publisher
- 岡大徳
- Category
- business · technology
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- ja
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- 30 Aug 2021
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- 1 Nov 2026
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1 Nov 2026
DPC高額薬剤判定2026年8月|出来高算定になる22品目を解説
令和8年8月5日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第654回) (https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75269.html)で、「DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応について」が議題となりました。DPC病院では、高額な新薬を使っても包括払いの点数に反映されないため、どの薬剤が包括評価の対象外になるかを正しく把握する必要があります。本号では、今回示された高額薬剤判定の仕組みと対象品目、医療機関が確認すべき点を解説します。 今回の判定では、22品目の医薬品を使用した患者について、該当する診断群分類に限り、次期診療報酬改定まで出来高算定とする事務局案が示されました。判定の仕組みは、薬剤費の見込み額が「その薬剤を使用していない症例の薬剤費の84パーセンタイル値」を超えるかどうかです。対象は、令和8年8月13日に薬価収載予定の新薬6品目と、令和8年6月19日に効能・効果や用法・用量が追加された医薬品16品目です。この案が告示に反映されると、医療機関は「薬剤」と「診断群分類」の組み合わせで対象患者を判定し、出来高で請求する必要があります。 1. 高額薬剤判定の仕組み 高額薬剤判定とは、DPCの包括点数に反映されていない高額な新規医薬品を、一時的に包括評価の外に出す仕組みです。判定は診断群分類ごとにおこなわれ、薬剤費が84パーセンタイル値を超えるかどうかで決まります。以下では、制度の目的、対象となる医薬品、判定の手順、具体例の順に説明します。 制度の目的は、DPC病院で新しい医療技術の導入が妨げられないようにすることです。 DPC/PDPSの包括点数は、過去の診療実績データをもとに設定されています。そのため、新たに保険適用された医薬品の費用は、包括点数に含まれていません。高額な新薬を包括払いのまま使うと、病院が薬剤費を持ち出すことになります。そこで国は、十分な使用実績データが集まりDPCで包括評価できるようになるまで、一定の基準に該当する薬剤を使った患者を包括評価の対象外としています。この判定は、新薬の薬価収載にあわせて年4回実施されます。 判定の対象となる医薬品は、新薬・一部変更・公知申請の3区分です。 新薬は、新たに薬価収載される医薬品です。一部変更(一変)は、効能・効果や用法・用量が追加・変更された医薬品のうち、薬事審議会で審査・報告されたものです。公知申請は、事前評価済みの公知申請により効能が追加された医薬品です。今回の判定には、新薬と一部変更の2区分が含まれています。 判定の手順は、診断群分類ごとに「仮想投与回数」から1入院当たりの薬剤費を算出し、84パーセンタイル値と比べるものです。 まず、効能・効果から、その医薬品を使う可能性のある診断群分類(14桁コード)を抽出します。次に、入院初日から退院まで添付文書どおりに投与した場合の回数(仮想投与回数)を求めます。この仮想投与回数には、平均在院日数が加味されます。そして、「1回投与当たりの標準的な費用」に仮想投与回数を掛けて、1入院当たりの標準的費用を算出します。この標準的費用が、その診断群分類で当該薬剤を使用していない症例の1入院当たり薬剤費(包括範囲の薬剤費)の84パーセンタイル値を超えると、高額薬剤に指定されます。なお、併用薬が必要な薬剤では、併用薬の費用も見込み額に含めて判定します。 84パーセンタイル値とは、薬剤費を低い順に並べたとき、下から84%の位置にある値です。 つまり、その薬剤を使うと、同じ診断群分類で使用していない症例の約84%よりも薬剤費が高くなる場合に、高額薬剤と判定されます。この基準は、前年度に使用実績のない医薬品に適用されます。 判定のもう一つの作業として、診断群分類の定義そのものに新薬を追加する場合があります。 類似薬効比較方式で算定された新薬について、比較薬がすでに診断群分類の定義テーブルで分岐として定義されている場合は、その新薬も定義テーブルに追加されます。この作業は「定義告示」への追加と呼ばれます。一方、包括評価の対象外とする薬剤と診断群分類を定める作業は、「高額薬剤告示」への追加と呼ばれます。 具体例として、ゼオマイン(痙性斜頸・眼瞼痙攣)の判定を見てみましょう。 ゼオマインの1回投与当たりの標準的な費用は16,660円です。対象となる診断群分類「010180xx99x0xx(不随意運動)」では、仮想投与回数は1回なので、1入院当たりの標準的費用も16,660円です。この診断群分類の84パーセンタイル値は13,059円です。16,660円は13,059円を超えるため、ゼオマインは高額薬剤と判定されます。このように、1回の費用が比較的低い薬剤でも、診断群分類の薬剤費水準が低ければ対象になります。 2. 今回該当した22品目 今回の判定で基準に該当したのは、新薬6品目と一部変更16品目の計22品目です。新薬は、令和8年8月13日に薬価収載予定の医薬品です。一部変更は、令和8年6月19日に効能・効果や用法・用量が追加された医薬品です。以下では、新薬、一部変更(がん領域)、一部変更(がん以外の領域)の順に一覧で示します。 新薬6品目は、希少疾患や小児がん、食道がんなど、幅広い領域にわたります。 特に、テロメライシン注は1回投与当たり3,102,489円と高額です。食道の悪性腫瘍の一部の診断群分類では、仮想投与回数が3回となり、1入院当たりの標準的費用は9,307,467円です。この額は、84パーセンタイル値(256,773円〜613,851円)を大きく上回ります。 * ウェイリズ錠(リルザブルチニブ) * 効能・効果:持続性及び慢性免疫性血小板減少症 * 対象の診断群分類:130110 出血性疾患(その他) * 1回投与当たりの標準的な費用:6,168.3円 * サデルガカプセル25mg(エリグルスタット酒石酸塩) * 効能・効果:ゴーシェ病の諸症状の改善 * 対象の診断群分類:100335 代謝障害(その他) * 1回投与当たりの標準的な費用:78,350.5円 * ジョエンジャ錠(レニオリシブリン酸塩) * 効能・効果:活性化PI3Kδ症候群 * 対象の診断群分類:130150 原発性免疫不全症候群 * 1回投与当たりの標準的な費用:133,176.5円 * イソトレックスカプセル(イソトレチノイン) * 効能・効果:大量化学療法後の神経芽腫 * 対象の診断群分類:02001x、040010、060030 * 1回投与当たりの標準的な費用:2,952.0円 * キネレット皮下注(アナキンラ) * 効能・効果:全身型若年性特発性関節炎、成人発症スチル病 * 対象の診断群分類:070560 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患 * 1回投与当たりの標準的な費用:23,702円 * テロメライシン注(スラタデノツレブ) * 効能・効果:根治切除・化学放射線療法の適応とならない食道癌 * 対象の診断群分類:060010 食道の悪性腫瘍 * 1回投与当たりの標準的な費用:3,102,489円 一部変更のうち、がん領域の7品目は、免疫チェックポイント阻害薬や二重特異性抗体などです。 テビムブラ、イミフィンジ、ミンジュビ、テクベイリ、タービーには、資料上「このほかに併用薬の費用がかかる」と注記されています。テクベイリとタービーは、両剤を併用する用法・用量で判定されています。レットヴィモは、RET融合遺伝子陽性の固形腫瘍が対象のため、脳腫瘍や乳がんなど36の疾患(6桁コード)が対象に挙げられています。 * ティブソボ錠(イボシデニブ) * 効能・効果:IDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道癌 * 対象の診断群分類:060050、060060 * 1回投与当たりの標準的な費用:60,015.2円 * レットヴィモ錠・カプセル(セルペルカチニブ) * 効能・効果:RET融合遺伝子陽性の固形腫瘍、RET遺伝子変異陽性の甲状腺髄様癌 * 対象の診断群分類:010010 脳腫瘍ほか計36分類 * 1回投与当たりの標準的な費用:7,717.4円 * ミンジュビ点滴静注用(タファシタマブ) * 効能・効果:再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 * 対象の診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫 * 1回投与当たりの標準的な費用:375,603円 * テビムブラ点滴静注(チスレリズマブ) * 効能・効果:治癒切除不能な進行・再発の胃癌 * 対象の診断群分類:060020 胃の悪性腫瘍 * 1回投与当たりの標準的な費用:428,996円 * イミフィンジ点滴静注(デュルバルマブ) * 効能・効果:胃癌における術前・術後補助療法 * 対象の診断群分類:060010、060020 * 1回投与当たりの標準的な費用:847,755円 * テクベイリ皮下注(テクリスタマブ) * 効能・効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る) * 対象の診断群分類:130040 多発性骨髄腫、免疫系悪性新生物 * 1回投与当たりの標準的な費用:最大1,081,023円 * タービー皮下注(トアルクエタマブ) * 効能・効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る) * 対象の診断群分類:130040 多発性骨髄腫、免疫系悪性新生物 * 1回投与当たりの標準的な費用:最大1,879,962円 一部変更のうち、がん以外の領域の9品目は、神経・免疫・内分泌・皮膚など多様な疾患が対象です。 このうちボトックス(下肢痙縮)は、対象となる診断群分類を特定できませんでした。そのため、全包括診断群分類の包括範囲薬剤費を用いて判定されています。 * アバスチン点滴静注用(ベバシズマブ) * 効能・効果:神経線維腫症2型 * 対象の診断群分類:070020 神経の良性腫瘍 * 1回投与当たりの標準的な費用:45,147円 * 献血グロベニン-I静注(ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン) * 効能・効果:自己免疫性脳炎 * 対象の診断群分類:010080、010081 * 1回投与当たりの標準的な費用:347,972円 * グロベニン-I静注(pH4処理酸性人免疫グロブリン) * 効能・効果:自己免疫性脳炎 * 対象の診断群分類:010080 脳脊髄の感染を伴う炎症 * 1回投与当たりの標準的な費用:267,672円 * ソグルーヤ皮下注(ソマプシタン) * 効能・効果:SGA性低身長症、ヌーナン症候群における低身長 * 対象の診断群分類:100360、140010、140620 * 1回投与当たりの標準的な費用:52,476円 * サデルガカプセル100mg(エリグルスタット酒石酸塩) * 効能・効果:ゴーシェ病の諸症状の改善 * 対象の診断群分類:100335 代謝障害(その他) * 1回投与当たりの標準的な費用:78,350.5円 * リツキサン点滴静注(リツキシマブ) * 効能・効果:頻回再発型・ステロイド依存性・難治性のネフローゼ症候群 * 対象の診断群分類:110260 ネフローゼ症候群 * 1回投与当たりの標準的な費用:93,343円 * ゼオマイン注用(インコボツリヌストキシンA) * 効能・効果:痙性斜頸、眼瞼痙攣 * 対象の診断群分類:010180 不随意運動 * 1回投与当たりの標準的な費用:16,660円 * ボトックス注用(A型ボツリヌス毒素) * 効能・効果:下肢痙縮 * 対象の診断群分類:全診断群分類 * 1回投与当たりの標準的な費用:221,680円 * オルミエント錠・内用懸濁液(バリシチニブ) * 効能・効果:円形脱毛症(広範囲・難治の場合) * 対象の診断群分類:080190 脱毛症 * 1回投与当たりの標準的な費用:4,820.0円 ※効能・効果と1回投与当たりの標準的な費用は、資料の記載どおりです。テクベイリとタービーの費用は、投与回数によって異なるため最大値を示しています。 ※対象の診断群分類は6桁の疾患コードで示しています。実際の判定は14桁の診断群分類ごとにおこなわれるため、詳細は告示で確認してください。 3. 医療機関が確認すべき3つのポイント 今回の判定を受けて、医療機関は「対象患者の判定」「算定期間」「院内体制」の3点を確認する必要があります。いずれも、請求漏れや査定を防ぐための実務上のポイントです。 第1のポイントは、対象患者を「薬剤」と「診断群分類」の組み合わせで判定することです。 出来高算定となるのは、対象薬剤を使用し、かつ、その薬剤に対応する診断群分類に該当する患者に限られます。たとえば、レットヴィモを使用しても、患者の診断群分類が告示に掲げられたものでなければ、包括評価のままです。告示では14桁の診断群分類番号が指定されているため、手術・処置等の分岐まで含めて照合する必要があります。 第2のポイントは、出来高算定が「次期診療報酬改定まで」の暫定措置であることです。 出来高算定の期間中に集まった使用実績データは、次期改定での包括評価の検討に用いられます。その結果、包括評価に組み込まれる薬剤や、診断群分類の分岐として定義される薬剤が出てくる可能性があります。改定のたびに、対象薬剤の取り扱いが変わっていないかを確認しましょう。 第3のポイントは、医事課・薬剤部・診療部門で対象薬剤の情報を共有することです。 高額薬剤判定は年4回実施されるため、対象薬剤は定期的に増えていきます。薬剤部が採用薬の更新情報を医事課に伝える流れを作っておくと、出来高算定の漏れを防げます。また、適用開始日は告示・通知で示されるため、薬価収載日や効能追加日とあわせて確認してください。 まとめ:高額薬剤判定で22品目が次期改定まで出来高算定に 令和8年8月5日の中医協総会(第654回)で、22品目の医薬品を使用した患者について、該当する診断群分類に限り次期改定まで出来高算定とする事務局案が示されました。判定基準は、薬剤費の見込み額が、診断群分類ごとに当該薬剤を使用していない症例の薬剤費の84パーセンタイル値を超えるかどうかです。対象は、新薬6品目と、効能・効果や用法・用量が追加された一部変更16品目です。医療機関は、薬剤と診断群分類の組み合わせで対象患者を判定し、院内で情報を共有して確実に出来高請求をおこないましょう。 参考資料 * 中央社会保険医療協議会 総会(第654回)議事次第(令和8年8月5日) * 中医協 総-7「DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応について」(令和8年8月5日) * 中医協 総-7参考「現行のいわゆる『高額薬剤判定』の運用方法について」(中医協 総-3(平成25年12月25日)一部抜粋) Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe (https://www.daitoku0110.news/subscribe?utm_medium=podcast&utm_campaign=CTA_4)

31 Oct 2026
費用対効果評価で5品目の薬価引下げ|11月1日適用の改定薬価まとめ
令和8年8月5日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第654回) (https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75269.html)では、費用対効果評価の結果を踏まえた薬価の見直しが議題となり、5品目・7規格の改定薬価が示されました。改定薬価は令和8年11月1日から適用されるため、医療機関と薬局は在庫や請求への影響を事前に把握しておく必要があります。本号では、対象品目の改定薬価、引下げ幅を決めた評価結果、評価の分かれ目となった論点の3点を解説します。 今回の見直しでは、評価を受けた4品目(テッペーザ、トロデルビ、パキロビッド、アウィクリ)と、トロデルビの類似品目であるダトロウェイを合わせた5品目・7規格の薬価が、0.3%から11.0%引き下げられます。引下げ幅は、各品目の費用対効果を示すICERの区分と、薬価の算定方式によって決まりました。最も大きく下がったのは、ICERが最上位の区分となったトロデルビと類似品目のダトロウェイで、いずれも11.0%の引下げです。評価の過程では、4品目すべてで、専門組織が企業の分析ではなく公的分析の結果を妥当と判断しました。 1. 価格調整の対象と改定薬価(11月1日適用) 価格調整の対象は、5品目の7規格です。評価結果そのものは、テッペーザとトロデルビが令和8年5月13日、パキロビッドとアウィクリが同年6月24日の中医協総会で承認されています。ダトロウェイはトロデルビの類似品目として、アウィクリ700単位はアウィクリの規格追加品目として、本体と同じ評価結果で調整されます。 テッペーザ点滴静注用500mg * 薬価:1,175,904円 → 1,111,100円 * 引下げ:64,804円(5.5%) トロデルビ点滴静注用200mg * 薬価:187,195円 → 166,604円 * 引下げ:20,591円(11.0%) ダトロウェイ点滴静注用100mg(トロデルビの類似品目) * 薬価:311,990円 → 277,672円 * 引下げ:34,318円(11.0%) パキロビッドパック300 * 薬価:12,538.60円 → 12,001.20円 * 引下げ:537.40円(4.3%) パキロビッドパック600 * 薬価:19,805.50円 → 18,956.70円 * 引下げ:848.80円(4.3%) アウィクリ注 フレックスタッチ 総量300単位 * 薬価:2,081円 → 2,074円 * 引下げ:7円(0.3%) アウィクリ注 フレックスタッチ 総量700単位(アウィクリの規格追加品目) * 薬価:3,809円 → 3,793円 * 引下げ:16円(0.4%) ※引下げ額・引下げ率は、資料の現行薬価と改定薬価から筆者が算出しました(引下げ率は小数第2位を四捨五入)。 改定薬価の適用日は、7規格すべて令和8年11月1日です。適用までに一定の猶予期間が設けられたのは、医療機関の在庫への影響などを踏まえたためです。高額な注射薬であるテッペーザやダトロウェイは1瓶あたりの差額が大きいため、11月1日をまたぐ在庫と請求の管理に注意が必要です。 今回の5品目を含め、費用対効果評価を終えた品目は、令和8年8月5日時点で60品目になりました。一方で、評価中の品目は同日時点で20品目あります。この中には、ケサンラやゼップバウンドのように市場規模の大きい品目や、今回の総会で新たに対象に指定されたマルシロンとサークリサが含まれます。 2. 引下げ幅を決めた評価結果と価格調整係数 引下げ幅は、「ICERの区分」と「薬価の算定方式」の2つで決まります。ICER(増分費用効果比)とは、比較対照の治療と比べて、健康な状態での1年(1QALY)を追加で得るのに必要な費用です。ICERが高いほど「費用に見合う効果が小さい」と判断され、価格調整係数が小さくなり、薬価が大きく下がります。 価格調整の対象は、薬価全体ではなく、薬価の一部に限られます。類似薬効比較方式で算定された品目では、既存薬より優れた点を評価して上乗せされた「有用性系加算部分」が対象です。原価計算方式で算定された品目では、「有用性系加算部分」と「営業利益部分」が対象です。資料に示された計算式は次のとおりです。 * 類似薬効比較方式(トロデルビ、パキロビッド、アウィクリ) 価格調整後の薬価 = 価格調整前の薬価 - 有用性加算部分 ×(1-β) * 原価計算方式(テッペーザ) 価格調整後の薬価 = 価格調整前の薬価 - 有用性系加算部分 ×(1-γ)- 営業利益部分 ×(1-θ) テッペーザは、ICERが750万円以上1,000万円/QALY未満の区分となり、営業利益部分に係数(θ)0.67が適用されました。対象集団は中等度から重症(CAS3点以上)の活動性甲状腺眼症で、比較対照はステロイドパルス療法と放射線外照射の併用療法です。資料では有用性系加算部分の係数(γ)は「-」とされており、営業利益部分の33%にあたる額が引き下げられた結果、引下げ率は5.5%となりました。 トロデルビは、ICERが1,500万円/QALY以上の区分となり、有用性加算部分に係数(β)0.1が適用されました。対象集団は化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能・再発乳癌で、比較対照はエリブリンです。資料の区分図では、1,500万円/QALY以上は係数が最も小さい区分にあたります。有用性加算部分の9割が引き下げられた結果、引下げ率は11.0%となり、類似品目のダトロウェイも同じ率で引き下げられます。 パキロビッドは、比較対照と効果が同等で費用が増加する「費用増加」と評価され、有用性加算部分に係数(β)0.1が適用されました。対象集団は重症化リスク因子を有する新型コロナウイルス感染症患者(小児を除く)で、比較対照はモルヌピラビルです。収載時の有用性系加算率が5%と小さいため、引下げ率は4.3%にとどまりました。 アウィクリは、4つの対象集団で評価が分かれ、各集団の結果を患者割合で加重平均した価格が改定薬価となりました。2型糖尿病でインスリン療法の治療歴がない集団(71.4%)と、基礎インスリン療法の治療歴がある集団(16.9%)は、効果も費用も同等の「費用同等」とされ、係数(β)は1.0です。1型糖尿病の集団(5.0%)と、2型糖尿病で基礎-追加インスリン療法の治療歴がある集団(6.7%)は「費用増加」とされ、係数(β)は0.1です。患者の88.3%が係数1.0の集団にあたるため、引下げ率は0.3〜0.4%の小幅にとどまりました。 3. 評価の分かれ目となった論点:4品目とも公的分析を採用 評価の過程では、企業の分析と国の公的分析で設定が分かれ、専門組織は4品目すべてで公的分析を妥当と判断しました。公的分析とは、企業の分析を第三者の立場で検証し、必要に応じて再分析する仕組みです。主な論点は、テッペーザが再発率と薬剤費、トロデルビがQOL値、パキロビッドとアウィクリが追加的有用性の有無でした。 テッペーザの論点は、再発率と薬剤費の設定です。企業はテッペーザの眼球突出の再発率を0%としましたが、公的分析は複数の臨床試験を統合した72週時点の24%を採用しました。比較対照の再発率についても、企業は文献値の最大値と最小値の中点である30.5%を用いましたが、公的分析は治療反応と再発の定義が明確な文献の18.4%を採用しました。薬剤費は、企業が体重50kgと仮定したのに対し、公的分析はNDB(匿名医療保険等関連情報データベース)の実際の算定バイアル本数から算出しました。専門組織は、再発率0%には違和感があり、症例数と長期の観察も不十分だとして、公的分析を支持しました。 トロデルビの論点は、QOL値の設定です。企業は、トロデルビ群は腫瘍が縮小した状態で過ごす期間が長いとして、同じ健康状態でも治療群ごとに異なるQOL値を設定しました。公的分析は、両群の平均値を用いて、同じ健康状態には同じQOL値を当てはめる形で再分析しました。専門組織は、モデルの健康状態は「無増悪(PFS)」「増悪(PD)」「死亡」の3つだけで腫瘍縮小は区別されていないとして、公的分析の方法を妥当としました。 パキロビッドの論点は、モルヌピラビルに対する追加的有用性の有無です。企業は、デルタ株流行以前にワクチン未接種者を対象とした試験の間接比較から、追加的有用性があると主張しました。公的分析は、オミクロン株流行下のワクチン接種環境では追加的有用性は示されていないと判断し、費用を比べる費用最小化分析を行いました。企業は不服意見を出しましたが、専門組織は、現状はワクチン接種者や既感染者が大部分であることなどを踏まえ、公的分析の結果を妥当と結論付けました。 アウィクリの論点は、週1回投与という利便性を含めた追加的有用性の有無です。企業は、HbA1cの改善に加え、利便性による治療満足度や治療継続の向上を有用性として主張しました。公的分析は、HbA1cの差は臨床的に意味のある大きさとはみなせず、低血糖はむしろ多い傾向があるとして、追加的有用性を認めず費用最小化分析を行いました。専門組織は、企業が根拠とした指標(DTSQ)は満足度の尺度でありQOLの尺度ではないとして、公的分析を支持しました。その後、企業の不服意見を受けて、訪問看護を受ける患者の割合や訪問看護の減少回数(月1〜2回)を設定した追加分析が公的分析で行われ、専門組織はこの追加分析の結果も妥当としました。 まとめ:11月1日から5品目7規格の薬価が下がります 令和8年8月5日の中医協総会では、費用対効果評価の結果に基づき、5品目・7規格の薬価を0.3%から11.0%引き下げる改定薬価が示されました。引下げ幅は、ICERの区分と算定方式で決まり、最上位の区分となったトロデルビと類似品目のダトロウェイが11.0%と最大です。評価の過程では、4品目とも専門組織が企業分析ではなく公的分析を採用しました。改定薬価は令和8年11月1日から適用されるため、高額な注射薬を中心に、在庫と請求の切り替えを確認しておきましょう。 (参考資料:中医協 総-6-1〜6-4、総-6参考1〜3(令和8年8月5日)) Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe (https://www.daitoku0110.news/subscribe?utm_medium=podcast&utm_campaign=CTA_4)

30 Oct 2026
半月板再生の「セイビスカス注」は医療機器の例で扱う案|中医協654回
令和8年8月5日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第654回) (https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75269.html)で、再生医療等製品「セイビスカス注」の医療保険上の取扱いが議題となりました。再生医療等製品は、医薬品と医療機器のどちらの例で扱うかによって、価格を検討する組織も、収載される基準も変わります。本号では、この製品がどちらの例で扱われる案となったのか、その理由と製品の中身を解説します。 結論として、セイビスカス注は「医療機器の例」により対応し、材料価格基準への収載を審議する案が示されました。この案の根拠は、作用原理が細胞による組織修復と考えられること、そして関節鏡下で損傷部に直接塗布する手術手技を伴うことの2点です。製品は患者自身の滑膜から採った幹細胞を培養したもので、採取・製造・縫合・投与という流れで使います。国内第Ⅲ相試験(対照群のない試験)では、膝の機能スコアの改善量が事前に定めた閾値を上回り、製品と因果関係のある有害事象は発生しませんでした。 取扱い案:医療機器の例で償還価格を検討 セイビスカス注は、医療機器の例により保険適用の手続きを進める案が示されました。この案が了承されると、保険医療材料等専門組織が償還価格を検討します。その結果を踏まえ、中医協総会が材料価格基準への収載を審議する流れです。 この手続きは、平成26年11月5日の中医協総会で了承されたルールに基づきます。このルールでは当面の間、個別の製品特性と薬事承認の結果を踏まえ、医薬品の例か医療機器の例かを判断することになっています。医薬品の例なら薬価算定組織が価格を検討し、薬価基準への収載を審議します。医療機器の例なら保険医療材料専門組織が価格を検討し、材料価格基準への収載を審議します。再生医療等製品に独自の保険上の体系を作るかどうかは、知見の蓄積を待って引き続き検討するとされています。 このルールは、条件及び期限付き承認を受けた製品にも同様に適用されます。令和8年1月14日の中医協総会で、条件及び期限付き承認の製品についても、通常の承認と同じく薬事承認の結果を踏まえて判断することが了承されました。なお、セイビスカス注の承認区分は「新再生医療等製品」で、承認日は令和8年5月8日です。 判断理由:組織修復という作用原理と、手術手技を伴う使用方法 医療機器の例とする案には、作用原理と使用方法という2つの理由があります。 1つめの理由である作用原理は、主構成体である幹細胞による組織修復と考えられています。資料では、作用原理として次の2点が挙げられました。 * 損傷部と周囲の滑膜組織に接着し、軟骨細胞へ分化して軟骨基質を産生することで、損傷部を癒合させ組織を再生する * 損傷部に滑膜組織を誘導し、体内にもともとある滑膜由来の幹細胞の供給を増やすことで、損傷した半月板の再生を促進する 2つめの理由である使用方法は、医療機器と類似しています。本品は、関節鏡下で半月板の損傷部に直接塗布する手術手技を伴います。この手術手技を伴う点が、医療機器と類似した使用方法と評価されました。 製品の概要:自己滑膜幹細胞を培養し、縫合後の損傷部に投与 セイビスカス注は、患者自身の滑膜から採った間葉系幹細胞を培養した製品です。間葉系幹細胞とは、軟骨や骨などさまざまな細胞に分化できる細胞を指します。製品の基本情報は次のとおりです。 * 販売名:セイビスカス注 * 一般的名称:ヒト(自己)滑膜由来間葉系幹細胞 * 類別:ヒト体性幹細胞加工製品 * 製造販売業者:富士フイルム富山化学株式会社 * 効能、効果又は性能:半月板切除術が適応となる半月板損傷 * 承認日:令和8年5月8日 製品の構成は、細胞懸濁液の「主構成体」と、運搬用キットの「副構成体」に分かれます。主構成体は、培養した幹細胞を液体に懸濁したものです。副構成体は、滑膜組織を運ぶ「滑膜組織運搬セット」と、全血を運ぶ「血液採取キット」です。 使用の流れは、医療機関と製造施設の間を往復する4段階です。 * 全血の採取と輸送:医療機関で全血を採取し、1~20℃で保存して製造施設へ送る * 滑膜の採取と輸送:膝関節から滑膜組織を採取し、10~22℃で保存して製造施設へ送る * 前処置:患者の状態を考慮し、投与直前までに半月板の損傷部を形成的に修復する(縫合による修復) * 受入れと投与:凍結した製品を受け取り−80℃以下で保存し、投与直前に融解して関節鏡下で1.5×10⁷~9.0×10⁷個を投与する 承認には、適正な使用を確保するための2つの条件が付いています。1つめは、一定数の症例データが集まるまで、全症例を対象に使用成績調査を実施することです。2つめは、適正使用のために必要な措置を講ずることです。具体的には、関連学会の協力で作成された適正使用指針の周知や講習の実施などにより、十分な知識と経験を持つ医師が、体制の整った医療機関で本品を用いるようにします。 臨床成績:膝の機能が大きく改善し、製品による有害事象はなし 国内第Ⅲ相試験(JP301試験)では、膝の機能スコアの改善量が事前に定めた閾値を上回りました。この試験は、半月板切除術が適応となる半月板損傷患者19例を対象とした、非盲検・非対照・多施設共同試験です。縫合による修復後に本品を1回投与し、投与後104週まで有効性と安全性を評価しました。対照群がないため、既存治療と直接比べた試験ではありません。 主要評価項目では、膝の機能を示すLysholm scoreが大きく改善しました。フラップ断裂を有する患者15例で、スクリーニング時から投与後52週時までの変化量(最小二乗平均)は53.5点(95%信頼区間:48.7~58.2点)でした。この信頼区間の下限値は、既存治療の文献報告から事前に定めた閾値22点を上回りました。 副次評価項目でも、改善が確認されました。 * 膝関節機能(KOOS)と疼痛(NRS):患者自身が評価するすべてのサブスケールで改善した * 半月板構造:血流がなく自然治癒が期待できない半月板中央部の完全癒合が、投与後52週時にフラップ断裂を有する患者の35.7%(5/14例)、全体の44.4%(8/18例)で認められた * 再手術:投与後2年間の観察期間中に、半月板病変に対する再手術はなかった 安全性では、治験製品と因果関係のある有害事象は発生しませんでした。処置による疼痛は、20名中17名(85.0%、33件)に発生しました。また、製品の不具合は発現しませんでした。 まとめ:医療機器の例で、材料価格基準への収載を審議へ セイビスカス注は、医療機器の例により対応し、材料価格基準への収載を審議する案が示されました。案の根拠は、細胞による組織修復という作用原理と、関節鏡下で塗布する手術手技を伴う使用方法です。製品は自己滑膜幹細胞を培養したもので、採取・製造・縫合・投与の流れで使います。第Ⅲ相試験では膝の機能スコアの改善量が閾値を上回り、治験製品と因果関係のある有害事象はありませんでした。今後は、保険医療材料等専門組織で検討される償還価格に注目してください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe (https://www.daitoku0110.news/subscribe?utm_medium=podcast&utm_campaign=CTA_4)
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