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2022 First episode About ことばランド ことばは、自らを表現する大切なツールです。
そのツールをうまく使いこなして、未来をデザインしませんか?「ことばランド」は、そのお手伝いをします。
文章コンサルタントの前田安正と、MC・フリーアナウンサーのみどりーぬこと、江川みどりがお送りします。
Publisher 前田安正
Category business
Language ja
Explicit No
First episode 14 Jun 2022
Latest episode 22 Jun 2026 Latest episodes 152 episodes in the feed.
22 Jun 2026
#EP152 日本語は曖昧だ!(前半)。方角の説明、できますか? 実は昨年筑摩書房から出版した『AIに書けない文章を書く』が、中学・高校・大学の入試問題に20校ほど採用されたんです。そこで、今回はその本から、特別編「あいまいなことばの感覚」〜東西南北から漢字の俗説まで〜をお話しします。
ところが、話が30分ほどになったので、これを前半と後半に分けてお伝えします。こかいは、その前半です。
僕たちが毎日使っていることばって、実はすごく曖昧なものが多い。当たり前すぎて気にもとめていないことばほど、「じゃあ説明してみて」と言われると途端に難しくなる。
「犬が西向きゃ尾は東」。
当たり前のことを言うことわざです。ここに出てくる「東」を説明してほしいと言われたら、どう説明しますか?
「日の出る方向」「太陽の昇る方向」。ほとんどの辞書がそう書いている。ところが、太陽の昇る方向は、季節によってずれます。
「季節によってずれる」という問題に真正面から向き合ったのが、『新明解国語辞典
第八版』にあります。それが、「春分の日の朝、太陽の出る方向の称」です。
春分の日の太陽は、ほぼ真東から昇って、ほぼ真西に沈む。他の季節よりブレが少ない。だから基準にしやすい、という発想です。
「東」という概念は、古くから太陽と結びついて語られてきました。万葉集に柿本人麻呂の有名な歌があります。
「ひむがしの野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ」
有名な歌ですね。東の野に光が立ちはじめて、振り返ると西に月が沈んでいく……。
じつは月も東から昇って西に沈みます。でも、「東」の説明に月の例を出したものはほぼないんです。それは月に満ち欠けがあって、毎日見える場所や形が変わるから、恒常的な説明に使いにくい。
「美奈さんは月になった。ならば俺は太陽になろう」
これは、『巨人の星』の主人公・星飛雄馬の台詞です。1960〜70年代のスポ根漫画の草分けです。明け方に、西に沈む月と東に昇る太陽を見て、自分を奮い立たせる場面ですね。万葉の時代の人麻呂の歌と、昭和の熱血漫画が、同じ天体の対比で結ばれているというのが面白い。
次は「南」と「北」です。辞書には「南は、太陽の出る方向(東)に向かって右の方角」、「北は、太陽の出る方向(東)に向かって左の方角」と書いてあります。
「東」の説明を前提にして、「右」「左」で南北を説明している。
そして、「右」「左」は、「右は、その人が北に向いていれば、東にあたる側」、左は「その人が北に向いていれば、西にあたる側」と辞書にある。
東→南・北、右左→北・東……まるで禅問答みたいです。
方角の説明は堂々巡りになってしまうんです。
でも、「東」という一点だけを体感として理解していれば、他は全部そこから導ける。それが「ことばの体系」というものですね。
さて、ここからちょっと核心的な話をします。漢字の字源についてです。
これについては、次回放送します。
15 Jun 2026
EP#151 「マジ文章書けないんだけど」Lesson5「副詞の係り受け」 『マジ文章かけないんだけど』から学ぶ文章レッスンシリーズの5回目。今回のテーマは「今日は「副詞の係り受け」という話をしたいと思います。
文章を書く際に、間違えやすいポイントなんです。係り受けというのは、文の中のある言葉が、他のどの言葉に「かかっている」か、そしてどの言葉が「受けている」か、その関係のことです。主語と述語の関係や修飾語と被修飾語の関係もそうです。今回取り上げるのは、副詞と述語の係り受け、です。
副詞は「とても」「すごく」「おそらく」「決して」……動詞や形容詞を修飾する品詞のことです。副詞は、実は使い方に決まりがあって、セットになる述語の形がある程度決まっているものがあります。
次の四つの文を見てください。
① その話は、全然楽しい。
② 必ずしもみんなが楽しめるイベントだ。
③ 彼の言うことは、まったくわかる。
④ 決して笑える話だ。
実はこの四つ、全部おかしいんです。でも気づきにくいのは、特に①の「全然楽しい」が日常会話でかなり浸透してきているからなんです。
ただ、「全然」「必ずしも」「まったく」「決して」、この四つは本来、否定の形で受けなければいけない副詞なんです。
つまり「〜ない」で受ける、ということです。正しくはこうなります。
① その話は、全然楽しめない。
② 必ずしもみんなが楽しめないイベントだ。
③ 彼の言うことは、まったくわからない。
④ 決して笑える話ではない。
この四つの副詞は、文法的に「否定形の述語とセットになる」という係り受けの規則を持っています。これを「否定形で受ける副詞」と言います。
会話の中では通じるし、最近はもう半ば定着してきていますけど、ビジネス文書や企画書に「全然大丈夫です」と書いたら、まず上司に直されます。
係り受けが決まっている副詞はもう一グループあります。今度は「推量・疑問の形で受ける副詞」です。次の五つの文を見てください。
① まさか、彼と付き合うことはない。
② おそらく、彼女にはカレシがいる。
③ いくらなんでも、これ以上面白いことがある。
④ もしかしたら、カギは家に忘れた。
⑤ もしや、この本は彼のものだ。
「もしや」はさすがに古風な言い方ですが、実は①〜⑤全部、述語の受け方がおかしいんです。
① まさか、彼と付き合うことはないだろう。
② おそらく、彼女にはカレシがいるに違いない。
③ いくらなんでも、これ以上面白いことがあるはずがない。
④ もしかしたら、カギは家に忘れたのかもしれない。
⑤ もしや、この本は彼のものではないだろうか。
整理するとこうなります。
まさか → 〜だろう
おそらく → 〜違いない
いくらなんでも → 〜はずがない
もしかしたら → 〜かもしれない
もしや → 〜ではないだろうか
この副詞たちは、推量の気持ちを含んだ述語——「だろう」「違いない」「かもしれない」——や、疑問の形で受ける必要があるんです。それを意識せずに、「おそらく〜だ」「まさか〜ない」で終わらせると、どこかチグハグな文になってしまう。
会話では、表情とか声のトーン、その場の雰囲気が補ってくれるから、言葉が多少ルールを外れていても意味が通じるんです。「全然楽しい」も、うれしそうな顔で言えば伝わる。
でも文章は書き手と読み手が時間も場所も共有していない。読み手は、書かれた言葉だけを頼りに意味を汲み取るしかない。だから、言葉の組み合わせ(係り受け)がしっかり合っていないと、読んでいる途中でつまずいてしまうんです。
一カ所の係り受けのズレで文章全体の信頼性が揺らいでしまうこともある。企画書とかビジネス文書では特にそう。「この人、文章が雑だな」という印象を与えてしまう。
次の文章、副詞に注目しながら読んでみてください。どこかおかしいところを探してみてください。
「おそらくこれが終電だと思い、急いで飛び乗った。しかし、行き先とは逆方向の電車に乗ってしまったらしい。酔っていたとはいえ、決して笑える話だ。もしかしたら反対方向の電車があるので、次の駅で降りることにした。すると降り際に、座っていたおじさんから『もしや、この傘はあなたのですね』と声をかけられたが、いくらなんでもそんな派手な柄の傘はもっているので『違います』と答え、ホームに降りた。まさかここまで運の悪いこともあると驚いたのだが、上り方向の電車は既に終了していた。こんなこともあるのだな、と全然笑えた。」
どうですか、わかりました?
「決して笑える話だ」は「決して笑える話ではない」です。
あと「全然笑えた」も……「全然笑えなかった」。
「おそらくこれが終電だと思い」……これは「おそらくこれが終電だろうと思い」。
「もしかしたら反対方向の電車があるので」は「もしかしたら反対方向の電車があるかもしれないので」です。
「もしや、この傘はあなたのですね」は?「もしや、この傘はあなたのではないですか」。
「いくらなんでもそんな派手な柄の傘はもっているので」は「いくらなんでもそんな派手な柄の傘はもっていないので」。
「まさかここまで運の悪いこともあると驚いた」は「まさかここまで運の悪いこともないだろうと驚いた」
——つまり「まさか〜ないだろう」というセットに整えるんですね。
副詞を変えると、文の意味そのものが変わってくる。だからこそ、副詞の係り受けは軽く見ちゃいけないのです。
今日のポイント
副詞には、セットになる述語の形が決まっているものが、大きく二つある。
ひとつ目は「否定形で受ける副詞」。「全然」「必ずしも」「まったく」「決して」、これらは「〜ない」という否定の形で受ける必要があります。
ふたつ目は「推量・疑問の形で受ける副詞」。「まさか」「おそらく」「いくらなんでも」「もしかしたら」「もしや」、これらはそれぞれ「だろう」「違いない」「はずがない」「かもしれない」「ではないだろうか」という形で受けます。
読み手と書き手が共通体験を持てない文章の世界では、言葉の組み合わせ(係り受け)が唯一の伝達手段です。副詞ひとつのズレが、読み手の「引っかかり」になってしまう。
文章力って、「難しい言葉を使う」ことじゃなくて、こういう地道な精度の積み重ねなんです。今日覚えた副詞のペアを、頭の片隅に置いておいてください。
8 Jun 2026
EP#150 「マジ文章書けないんだけど」Lesson4 既知情報と未知情報 『マジ文章かけないんだけど』から学ぶ文章レッスンシリーズの4回目。今回のテーマは「情報の新旧」。読み手が知っている情報と、まだ知らない情報。それをどう操るか、という話です。
「なんとなくしっくりこない」って感じる文章、その原因がここにある場合も多いんです。次の二つの文を聞いてください。
①「綾瀬はるかが、月9の主役に選ばれた」
②「綾瀬はるかは、月9の主役に選ばれた」
①の「綾瀬はるかが」は、「月9の主役は誰なの?」という質問への答えです。主役が誰かはまだ知らない。だから「が」がついた綾瀬はるかが、新しい情報として提示される。
一方②の「綾瀬はるかは」は、「綾瀬はるかは何のドラマに出るの?」という質問への答え。綾瀬はるかという人物はすでに話題に上っている。だから「は」がついている。つまり「が」がついた名詞は新情報で、「は」がついた名詞はすでに知っている情報ということです。
本書ではこの関係をシンプルな公式で整理しています。
「未知情報+が+既知情報」
「既知情報+は+未知情報」。
「パリ旅行はどうだった?」という質問への答えとして、「オランジュリー美術館がすごくよかった」と答えたとします。
この場合、聞き手はパリ旅行に行ったことは知ってる。でも、どこがよかったかはまだ知らない。 だから「オランジュリー美術館が」という形になる。未知の情報に「が」がつく。
逆に「パリ旅行はどうだった?」という質問文のほうは、「パリ旅行」が既知情報だから「は」がつく。
質問する側は「パリ旅行に行ったこと」を知っているから、「は」で提示して、「どうだった?」という未知の情報を引き出している。
面白い例をもう一つ。「タケル君がユミの新しいカレシなんだって」と「タケル君はユミの新しいカレシなんだって」。
江川: あ、これ全然違う感じがする!
カレシがいることは既知情報。タケル君だという部分が未知情報だから「が」がつく。
「タケル君は」のほうは……タケル君のことはみんな知ってるんだけど、そのタケル君がユミのカレシ!?っていう驚きがある。タケル君という人物が既知情報。で、「ユミのカレシ」だという事実が未知情報として後半に来る。
これが日本語の繊細なところで、「が」と「は」の選択一つで、話し手の感情的な重点まで変わってしまう。
情報設計を意識した「は」と「が」の使い分け、3つのポイントをご紹介します。
ポイント①「読み手はすでに何を知っているか」を意識する。文章を書く前に、読み手にとっての既知情報と未知情報を整理する。既知情報には「は」、未知情報には「が」が基本です。
新商品の紹介文だったら、「発売されること」は告知済みの既知情報。だから「新商品は」で始めて、特徴を後半で伝えるイメージです。
一方「今回の新商品が、業界初の〇〇です」という形にすると、「業界初」という部分が未知情報として強調されます。
つまり、「が」を使うか「は」を使うかで、強調したいポイントがずれてくる。
ポイント②は「伝えたいポイントを末尾に置く」。「は」を使うと、文の重心は後半に移ります。読み手の注意を引きたい情報を文末に持ってくる。たとえば「今回のキャンペーンは、過去最大の参加者数を記録した」。
ポイント③は「『が』を使って新情報を鮮明に打ち出す」。「誰が・何が、どうした」という新しい発見や結果を伝えるときは「が」が有効。
「調査の結果、前田案が最も支持を集めた」という文、「どの案が選ばれたか」という未知情報をはっきり提示できます。
改めてまとめておきます。「が」は読み手がまだ知らない未知情報に使う。「は」は読み手がすでに知っている既知情報を提示して、後半の未知情報へと導く。
「は」と「が」は単なる文法ではなくて、情報設計のツールだったのです。
……………………
note#21で詳しく紹介しています。併せてお読みください。
https://note.com/majibun_academy/n/n717827d6c88c (https://note.com/majibun_academy/n/n717827d6c88c)
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