面白かった本について語るPodcast、ブックカタリスト。今回は、第150回特別回として、「そもそも本を読むことってどういうこと?」に関する話題でトークしました。
基本的にアフタートークはいつもこのノリでしゃべっておりますので、楽屋裏を覗く感じでお楽しみください。
本に期待し過ぎない
読書という行為は持ち上げられることが多いわけですが(「本を読むのはいいことだ」)、それを見かけるとアンビバレントな気持ちになります。たしかに本を読むことで何かしら良いことはあるのかもしれない。でも、そんなに持ち上げるものだろうかとも思ってしまうのです。
たしかに読んで面白い本はあります。しかしそれを至上価値にしてしまえば、「面白くない本は読まない」という行為が導かれるでしょう。同様に、役立つ本はたしかにありますが、それにこだわり過ぎると「役に立たない本は要らない」となってしまいます。
それって文化的な活動の逆を行くマインドセットです。いやいや、そうじゃないだろう、と。
倉下流読書理論では、「読書とは、本々(books)を読むこと」です。どうしたって、本の中には面白いものとそうでないものが出てきます。そういうデコボコした本たちを読んでいくのが読書という活動だと私は考えます。「読書が面白い」というのは、そのような総合的な意味においてです。
読書活動のすべてが「面白い」で満たされているのではなく、デコボコでジグザグの道のりを歩んでいく全体が面白い、あるいは愉しい。
この考え方は、再帰的に展開すれば、一冊の本にも適用できます。一冊の本の中にも面白い部分とそうでない部分があり、それらを統合して「その本が面白い」と言える。あるいはそういうデコボコでジグザグの道のりを進んでいく全体が面白いと言える。
もちろん、読書活動以外に適用することもできるでしょう。個々の出来事や瞬間だけで断じるのではなく、トータルの歩みとして判断すること。
これは視点を少し引くということですし、時間軸を長く取るということでもあります。それこそが瞬間化しつつある社会へのカウンターとなるのではないか、というとちょっと大げさですが、近年失われつつある視点であることは間違いないでしょう。
読んだ本が面白いことにこしたことはありませんし、私もできるだけ面白い本を読みたいとは思っています。でも、その判断を短期的に、あるいは先回りしてやろうとはしていません。すべては「振り返ってから」考えるものだと思っています。
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6 Oct 2026
BC149『ヒトとAI』と『つくることとAI』
面白かった本について語るPodcast、ブックカタリスト。今回は倉下が二冊セットシリーズ第六弾として、『ヒトとAI (岩波新書)』 (https://link.amazon/B0gZwy3BD)と『つくることとAI 生成と複製のあいだで』 (https://link.amazon/B03mIXeVi)の二冊を紹介しました。
書誌情報およびメモ
二冊の書誌情報および、収録時に使用したメモについては以下のページからご覧いただけます。
◇ブックカタリストBC149用メモ | 倉下忠憲の発想工房 (https://scrapbox.io/rashitamemo/%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88BC149%E7%94%A8%E3%83%A1%E3%83%A2)
二種類の方向性
二つの方向があるように思います。一つは、自動化重視・均一化受容の方向。もう一つは、プロセス重視・個別性受容の方向です。それぞれを象徴的な言葉で表すならば「事務と創造」となるでしょうか。
どちらも社会を構成する営みであり、欠かせないものと言えますが、現代的な風潮では前者のアプローチが重視されているように感じます。それに、自動化の方向であったとしても、『ヒトとAI』が示すように監査における判断の役割はなくしきれません。「事務」だけで片づくとは言えないのです(現場の事務でもたくさんの判断が随所で行われていると思います)。
ポイントは二つの「原理」を維持しておくことにあるのでしょう。どちらか一方を採用するのではなく、相反する原理を共に採用すること。それは{公共的なものと個人的なもの}、{生き延びるためのものと生きるためのもの}、{会話の次元と言葉そのものの次元}といった形でさまざまな領域にさまざまな形で存在しています。そのような相対するものが内在している状態こそ、調和の取れた形ではあるのでしょう。
しかし、テクノロジーとそこから要請される制度は一方の原理により重きを置くように動くことが多い点は否めません。特に、テクノロジーと資本主義のかけ算は、「それ以外の原理」を圧倒的な勢いで刈り取っていくような雰囲気すら感じられます。ある種の略奪機械です。
だからこそ、反対側の原理をしっかりとサポートしていく必要があるのだと思います。しかしそれは、単にもう片方の原理を否定すればいい、という話ではありません。そういう単純な”革命”は、かえって複数の原理性を殺してしまうでしょう。
必要なのは、広くゆっくり考えることであり、それは私たちが現代生活においてますます無くしつつあるものなのかもしれません。
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22 Sept 2026
BC148
面白かった本について語るPodcast、ブックカタリスト。
今回は『労働の思想史』 (https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0BWRT7GQJ/room510-22/)について語りました。
前回の『戦争の思想史』に続く、思想史シリーズの第2回。(全3回予定)
今回は「戦争」に比べて歴史だけの要素は少なかったんですが、逆に自分は「歴史」中心に読んでいて、それを面白く感じた、というのは中々に面白い体験でした。
たぶん自分は、世間の平均から見て、労働というものをかなり低く見積もっていると思ってるんですが、この本を読んで改めて自分の特性に自信を持つことができた気がします。
きつい仕事をしている人が偉いとか、そもそも働かないやつは怠けているとか、そういうのは全部歴史によって育まれてきた「今の価値観」でしかない。
働くことを過剰に「上に見てしまう」傾向に歯止めをかけるためにも、こういう本をもっと広めねばならん、ということを感じました。
ブックカタリストで紹介した本一覧 (https://goryugo.com/sale/bc/)
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