5 Episodes
2020 First episode About INOUE Masaki's Poetry Reading 井上政樹のポッドキャストです。ここでは自作の詩を朗読していきたいと思います。
Publisher 井上政樹
Category arts
Language ja
Explicit No
First episode 13 Dec 2020
Latest episode 29 Dec 2020 Latest episodes 5 episodes in the feed.
29 Dec 2020
月光帝国の終焉 「月光帝国の終焉」
月面に鸚鵡が突き刺さり
ウサギはいっせいに逃げ出した
砕け散る月と心中する光は悲しみに似て
天の川に流れゆき
ただきらきらと空のもくず
地球には
雨のようにウサギが降り
跳ねて何処かに行ってしまった
"あたしのことはもう良いから、あなた達は逃げなさい"
かぐや姫の一言で
何万羽というウサギは
泣きながら行ってしまった
さて
これから何処へ行こう
月灯りの無い首都高速湾岸線を
かぐや姫はとぼとぼ歩く
あちこちに咲いた巨大な鉄砲ゆり
その白い花の中から
鋼鉄の蟹はすべり落ち
アスファルトの上を
おびただしい数のやつらは這いまわる
月ウサギを捕獲するために
やつらは這いまわる
鋼鉄の紅い甲羅
身体からは海の匂いがして
塩に錆びている
首都高速湾岸線を進む蟹の群れ
その行進
あとには月ウサギの死骸
二月の雪は降りしきり
何もなかったことにして降りしきる
"もはやこれまで"
かぐや姫は喉を突いて言葉を失い
永遠に月は
この世から月言葉を失った
夜が明けていつものように人々は
せわしく電車に乗り込むけれど
人々は知らない
月の言葉を話す者が
もうこの世にはひとりもいなくなったことを
それはとても淋しいことだということを
私達は誰も知らない
26 Dec 2020
帰郷 「帰郷」
もうすぐわたしもそこにゆく
墓石に手をあわせ
母が云う
そこから生まれてきたわけでもないのに
母はそこに帰ろうとする
縁、という
たよりない灯りを信じて
信じることは
あきらめることに似て
つちの下の女の数は
そらの下の女の数よりいつも多い
墓の下
女たちが差出すあやとりに
男たちは黙りこむ
ゆびきりの果てしなさに
男たちは墓の下で黙りこむ
ひぐらしの鳴き声が
母の曲がった背中に降っている
こらえてな
つぶやくと母はズボンを下げ
拝石にしゃがみ小便をした
我慢していた尿は石にひろがり
私の靴を濡らし
つちの下の女たちを濡らす
たよりない灯りも濡れ消え
母はどこへも帰れない
この島国の誰もかれもが
つちの下の女たちのこどもであるならば
私もあなたも、
私達はどんなふるさとへも帰れない
22 Dec 2020
春待ちの詩 「春待ちの詩」
弁護士が目くばせをして
うつ向いたまま君は
あきらめたようにつぶやく
わたしはただ
春を待っていたのです
ノアの方舟は
飛び立つ前に波にのまれたと
迷彩服の男達は屋上に立ちつくす
我々はただ
春を待っていただけだ
ニュースキャスターが
数字を読み上げ
増えれるたびに数字は重さを失う
その数字達はただ
春を待っていただけだ
裁判官がピストルを取り出し
自らのこめかみにあて
ゆっくりと引き金をひく
待ちわびた春が
また知らん顔してすれ違う
私達は知らず知らずナイフになる
誰かの喉もとに突きつけられた
傍観という刃先を持つナイフになる
仕方のない季節があと何度めぐれば
春はやって来るのだろう
遥かな青い鳥を追いかける
蜃気楼に手を伸ばす
砂は降る
春はまだ遠く
思わせぶりに微笑んで
待つという言葉を従える
待つという言葉は
ただ春のためにある
15 Dec 2020
手 「手」
こぶしをひらきなさい
こぶしにできることなど
たかがしれているから
にぎりしめた手をひらきなさい
ひらいた手でふれなさい
ひとにふれなさい
ひとの手をにぎりなさい
いつもこぶしをつくるのは
ひとににぎられていない手だから
手のひらにできて
こぶしにできないこと
手が手をゆるすこと
あなたがにぎりしめるもの
それはじぶんのこぶしではなく
いつもだれかの手であるように
13 Dec 2020
みずをこふ 「みずをこふ」
ひらがなの「ふ」が游いでいる
紙の上をひらひらと
「ふ」が游いでいるのだ
知恵遅れの子供が気づいてゆびを差し
大人はため息をつきながら
あらゆるひらがなは
実は金魚なのだという事実を
また見逃す
ひと握りの上手くやった金魚たちは
図書館でぐっすり眠っている
たいていの金魚たちは
落ち着かない本屋に暮らし
ある金魚たちは新聞の紙面に派遣され
いくら游いでも
明日はゴミ箱に捨てられる
ビルの屋上にそろえて置かれた靴の下
手紙の上で震えながら
読まれることを待ちながら游いでいる
そんな金魚もいる
はみ出した金魚を
金魚すくいが狙っている
書けなかったことが
住むべき紙を持たないルンペン金魚になって
吐きたくて吐けなかった本音が
そんな金魚になる
夏祭りの金魚は
最後の力を振りしぼり逃げまどう
すくわれるのか
すくわれればすくわれるのか
おまえなどに飼われるものかと
逃げまどう
図書館に眠る金魚はいいだろう
力強くはっきりとしていて
いいだろう
僕たちは弱いから
口をぱくぱくしながら空気に溺れ
いつだってこんなところにたどり着く
ふるえていても細くても
僕たちは文字になりたかった
僕は水を乞う
すくわれ損ねて落ちた地面の上で
僕は水を乞う
水は何処だ
水は何処だ!
いっそそれは雨でもいい
二度と降り止まない雨よ降れ
僕は水を乞う
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