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2023 First episode About 蜘蛛と箒企画「日々美術」 蜘蛛と箒企画「日々美術」は、石川卓磨(美術家、美術批評家)、沢山遼(美術批評家)、渡辺泰子(美術作家)がゆるくおしゃべりする番組です。
Publisher 蜘蛛と箒
Category arts
Language ja
Explicit No
First episode 3 Jun 2023
Latest episode 25 Oct 2026 Latest episodes 52 episodes in the feed.
25 Oct 2026
#52 未来の舵取りについて 蜘蛛と箒企画「日々美術」は、石川卓磨(美術家・美術批評家)、沢山遼(美術批評家)、渡辺泰子(美術作家)の3人が、美術を中心としたあれこれの話を、気軽に自由にしてみるという番組です。今回のテーマは「未来の舵取り」です。舵を取ることは、地図とコンパスによってあらかじめ航路を定めることとは異なり、不定形な海の上を進み続ける船の向きを、その都度変えていく行為です。予測と制御、偶然と自由意志をめぐる問いは、神学やSFの古典的な主題であると同時に、AIエージェントが人間に代わって選択を行いはじめた現在、新たな切実さを帯びています。合理性への収束と終末論的な想像力が強まるなかで、エラーや固有性、旅や寄り道、そして子どもや動物のように目の前の現実を生きる力を、どのように取り戻せるのか。石川・沢山・渡辺の三人が語り合います。
内容
舵はコンパスとは違う
プリコグとAIエージェント
AIを擬人化しないために
買い物を代行するAIと、選ぶことの負荷
未来の舵取りは子どもと動物に戻る
キーワード人名
アーシュラ・K・ル=グウィン(1929–2018)アメリカの小説家。『ゲド戦記』『闇の左手』などで知られる。創作指南書『Steering the Craft』(1998、改訂版2015)は、邦訳『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』(大久保ゆう訳、フィルムアート社、2021)として刊行されている。
フィリップ・K・ディック(1928–1982)アメリカのSF作家。現実と虚構、人間と機械の境界を問う作品群で知られる。短編「マイノリティ・リポート」(1956)では、予知能力者の予測にもとづいて犯罪を未然に取り締まる「犯罪予防局」の長官が、自らが殺人を犯すと予知されることから物語が展開する。
スティーヴン・スピルバーグ(1946–)アメリカの映画監督。2002年、ディックの短編を原作に、トム・クルーズ主演で映画『マイノリティ・リポート』を監督した。原作とは主人公の設定や物語の構造が大きく異なる。
ユヴァル・ノア・ハラリ(1976–)イスラエルの歴史学者。ヘブライ大学教授。『サピエンス全史』で知られる。『NEXUS 情報の人類史』(2024)などで、AIを単なる道具ではなく、自ら決定を下しうるエージェントとして論じている。
チャーリー・カウフマン(1958–)アメリカの脚本家・映画監督。『マルコヴィッチの穴』『エターナル・サンシャイン』の脚本で知られる。監督作『もう終わりにしよう。』(2020)は、イアン・リードの小説を原作とし、登場人物の意識の内部を映像化したかのような特異な時間構造を持つ。
クリストファー・ノーラン(1970–)イギリス出身の映画監督。ホメロスの叙事詩を原作とする『オデュッセイア』(2026)を監督。米国では2026年7月17日、日本では同年9月11日に公開された。
山田五郎(1958–2026)編集者・評論家。西洋美術から時計、ファッションまで幅広い分野で活動した。2021年に開設したYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」で美術解説を行い、2026年7月に67歳で死去。死去後に公開された最後の講義のテーマは「メメント・モリ」であった。
専門用語
プリコグ(precog)「precognition(予知)」に由来する、ディック「マイノリティ・リポート」に登場する予知能力者。原作・映画ともに3人のプリコグが登場し、彼らの予知が一致しない場合に生じる少数意見の報告が、作品タイトルの由来となっている。
AIエージェント(AI agent)ユーザーの指示にもとづき、外部のアプリケーションやサービスを操作して、予約・購入・解約などのタスクを自律的に遂行するAIシステム。応答を生成するだけの対話型AIと区別される。
Meta Muse Meta社が2026年9月に米国で提供を開始したパーソナルAIエージェント。メール、カレンダー、決済、買い物などのアプリと連携し、不要なサブスクリプションの解約や価格比較などを代行する。
長期主義(longtermism)遠い未来に生きる膨大な数の人々の福祉を、現在の倫理的判断において重視すべきとする思想。効果的利他主義の文脈で提唱され、人類存亡リスクへの対処を優先課題とする。現在の具体的な問題を軽視しうるという批判もある。
だまし舟 伝統的な折り紙のひとつ。帆の先をつまんだまま目を閉じてもらい、その間に折り方を操作すると、つまんでいた場所が帆から舳先に変わっている、という遊びを伴う。
欲しがりません勝つまでは 太平洋戦争期の1942年に「国民決意の標語」として選ばれた戦時標語。物資の欠乏に対する耐乏生活を国民に求めた。
※本番組で述べられる意見は、個人の経験、情報、または研究に基づくものです。他の人と異なる場合があり、個別の状況によっては適用されない可能性があります。個人的な意見を尊重していただけると幸いです。
ロゴ:岡田和奈佳 ジングル:高木生
Website: http://kumotohouki.net/ (http://kumotohouki.net/)
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30 Sept 2026
#51 水平と垂直について 蜘蛛と箒企画「日々美術」は、石川卓磨(美術家・美術批評家)、沢山遼(美術批評家)、渡辺泰子(美術作家)の3人が、美術を中心としたあれこれの話を、気軽に自由にしてみるという番組です。今回のテーマは「水平と垂直」です。バックミンスター・フラーは直交座標を批判し、宇宙は垂直にも水平にも働いていないと言いました。水平と垂直は、美術における形式的な問題であるだけでなく、人間の身体や思想、テクノロジー、そして政治とも深く結びついています。その二項対立を自明のものとして語ることへの問い直しから、ではその先に何があるのかへ。重力との関係をいかに捉えるかは、美術の問題であると同時に、私たちがどのように世界を生きるかという問いでもあります。石川・沢山・渡辺の三人が語り合います。
バックミンスター・フラーが嫌った直交座標
死ぬと人は横たわる
地面の痕跡を、なぜ壁にかけるのか
重力を忘れた無重力と、重力との均衡から生まれる無重力
キーワード
人名
バックミンスター・フラー(1895–1983)アメリカの建築家・思想家・発明家・未来学者。球面三角形を基本単位とするジオデシック・ドームの設計で知られる。直交座標系に基づく従来の設計思想を批判し、自然の幾何学的原理に基づく全方位的な空間設計を追求した。「宇宙船地球号」という概念の提唱者としても知られる。
コンスタンチン・ツィオルコフスキー(1857–1935)ロシアの科学者・宇宙航行学の先駆者。独学で数学・物理学・天文学を修め、1903年にロケット推進の基礎理論を発表。宇宙を「自由空間」と呼び、地球の重力的・社会的制約からの解放として宇宙移住の思想を展開した。ソ連の宇宙開発の理論的礎を築いた人物として「宇宙航行学の父」と称される。
クレメント・グリーンバーグ(1909–1994)
アメリカの美術批評家。抽象表現主義およびカラーフィールド絵画の擁護者として知られ、絵画の平面性・視覚的純粋性を重視するフォーマリズム批評を確立した。その視覚中心主義的な立場は後のポスト構造主義批評から「垂直的な視覚性」として批判的に位置づけられた。
ロザリンド・クラウス(1940–)
アメリカの美術批評家・理論家。コロンビア大学教授。美術批評誌『October』の共同創刊者。主著『アヴァンギャルドのオリジナリティ』(1985)でモダニズム神話を批判的に解体した。グリーンバーグ的な垂直性・視覚中心主義に対し、水平性・物質性・身体性を重視するポストモダン的批評の立場を確立した。
専門用語
メルカトル図法(Mercator projection)16世紀のフラマン人地図製作者ゲラルドゥス・メルカトルが1569年に考案した地図投影法。経線と緯線が直角に交わるため航海に便利だが、高緯度地域の面積が著しく拡大されるという歪みを持つ。球体を平面の直交座標系に変換することの限界を示す典型例とされる。
直交座標系(Cartesian coordinate system)
互いに直角に交わる座標軸によって空間を記述する数学的体系。17世紀のルネ・デカルトに由来する。都市計画・地図・建築など近代的な空間把握の基礎をなすが、フラーはこれが球体としての地球や宇宙の実際の構造と合致しないと批判した。
※本番組で述べられる意見は、個人の経験、情報、または研究に基づくものです。他の人と異なる場合があり、個別の状況によっては適用されない可能性があります。個人的な意見を尊重していただけると幸いです。
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6 Sept 2026
#50 夜の消失と解放の狭間で 蜘蛛と箒企画「日々美術」は、石川卓磨(美術家・美術批評家)、沢山遼(美術批評家)、渡辺泰子(美術作家)の3人が、美術を中心としたあれこれの話を、気軽に自由にしてみるという番組です。今回のテーマは「夜」です。カラヴァッジョやラ・トゥールの蝋燭画から、裁判沙汰にまでなったホイッスラーの夜景、ガス灯の下で描かれたゴッホの色彩、そしてブルース・ナウマンのネオンまで、美術は繰り返し夜を描いてきました。一方で、どんな暗さでも鮮明に写してしまうカメラを手にした私たちは、夜そのものを失いつつあるのかもしれません。光こそが絵画を成り立たせるのだとしたら、視覚が奪われる夜になぜ豊かさがあるのか。闇のなかで人が見るのは暗闇ではなく満天の星だとしたら、それは何を意味するのか。そして夜を歩くことは、誰にとっても等しく自由ではありえないのではないか。石川・沢山・渡辺の三人が語り合います。
内容
美術史のなかの夜──カラヴァッジョからブルース・ナウマンまで
視覚を奪う夜、視覚を開く夜
満天の星と、正気の境界
夜道のジェンダー
解放としての暗闇
キーワード
人物
カラヴァッジョ(1571–1610)
イタリアの画家。強い明暗対比によって闇のなかから人物を浮かび上がらせる手法で、以後の夜の絵画の起点となる。ラ・トゥールもその系譜に位置づけられる。冒頭でラ・トゥール、レンブラントと並べて挙げられる。
フランシスコ・デ・ゴヤ(1746–1828)
《理性の眠りは怪物を生む》(『ロス・カプリチョス』1797–99年の43番)。夜と理性の眠りを結びつけた図像として、ルドンやシュルレアリスムから遡って参照される。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834–1903)
《黒と金色のノクターン──落下する花火》(1875年頃、デトロイト美術館)。1877年の出品にラスキンが激しい非難を加え、翌1878年に名誉毀損訴訟。夜を風景として、ほとんど抽象的に描くことの危うさを象徴するエピソード。
オディロン・ルドン(1840–1916)
印象派を、可視的な現実世界の枠内にとどまっていると批判した側。長く黒だけで制作し、晩年に色彩へ転じる。目を閉じたときにこそ知覚が立ち上がるという立場が、この回の対立軸の一方をなす。
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853–1890)
1888年アルル期の夜の場面(《夜のカフェ》《夜のカフェテラス》《ローヌ川の星月夜》)と、1889年の《星月夜》。夜が黒ではなく色彩に満ちうることを示した転換点として。
熊谷守一(1880–1977)
《轢死》(1909年)。列車に飛び込んだ女性を暗い画面に描いた作品で、経年変化により現在は識別しにくい。同時期の《蝋燭》(1909年)とあわせ、暗闇のなかで対象がどう見えるかを研究していた時期の作。夜型の生活を送った画家。
シンディ・シャーマン(1954–)
《アンタイトルド・フィルム・スティル #54》(1980年)。夜の路上で警戒するように佇む女性像が、遊歩とジェンダーの主題に接続される。シリーズ《アンタイトルド・フィルム・スティルズ》は1977–80年制作。
書籍・作品
ジョナサン・クレーリー『24/7 眠らない社会』
原著2013年、石谷治寛訳・岡田温司監訳、NTT出版、2015年。資本主義が最後の可処分時間である睡眠を侵食していく過程を論じる。
レベッカ・ソルニット『ウォークス 歩くことの精神史』
原著 Wanderlust: A History of Walking、2000年、東辻賢治郎訳、左右社、2017年。歩行の文化史。自由に歩けることが誰にとっても等しくは成立しないという指摘が、この回の後半を支える。
アイザック・アシモフ「夜来たる」(1941年)
6重太陽の惑星ラガッシュに、2049年ごとの日食で夜が訪れる。人々が見るのは闇ではなく満天の星。エマソン『自然』の一節から着想された。
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