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<p style="font-size:16px;color:#333333;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;font-weight:normal;text-align:justify;hyphens:auto" data-flag="normal">前ちゃんが気になった本を朗読していきます。聞きながら本の内容を理解して、勉強していきましょう。もちろん、分からないところはいつでも聞いてください。</p>
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July 24, 2020
夢野久作ードグラ・マグラ33
<span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span>絶対探偵小説</span></p><br /><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span>脳髄は物を考える処に非ず</span></p><br /><br /><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span>===正木博士の学位論文内容===</span></p><br /><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">一記者</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ナニ。吾輩の学位論文「脳髄論」の内容がナゼ学界に発表されないかッテ……アハハ。馬鹿にするな。物議を起すのを怖がって発表を差控えるような吾輩じゃないよ。実はチョット書き添えたい事があるから、手許に引取っている迄の事さ。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> その内容を話せって云うのか。ウン。それあ話せない事はないさ。……しかし話したら直ぐに新聞に書くだろう。実はこの</span>前に吾輩が話した「地球表面上は狂人の一大解放治療場」云々の記事を、君の新聞に書かれたんで、少々弱らされたよ。自家広告の宣伝記事だというので、ダイブ方々で八釜しかったらしいんだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ナアニ。吾輩は平気さ。何と云われたってビクともするんじゃないが、吾輩がすこし大きな事を云うと、事なかれ主義の総長や、臆病者の学部長が青くなって心配するのが気の毒でね。鶴川君の「万有還金」の研究や、赤井君の「若返り手術」以来、九大には山師ばかり居るように誤解されているからね。まして</span>況んや今度の「脳髄論」の内容と来たら、前の解放治療の話に何層倍輪をかけた物騒なテーマを吹き立てているんだから……。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> フン。書かないから話せというのか。新聞記者の書かない口上も久しいもんだが大丈夫かい。ウン……そんなら話そう。ところでドウダイ……葉巻を一本……上等のハバナだ。吾輩の気焔の聞き賃、兼、新聞記事の差止め料だ。チット安いかね。ハハハハハハ。きょうは吾輩</span>閑散だからね。少々メートルを上げるかも知れないよ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ……時に君は探偵小説を読むかい。ナニ読まない。読まなくちゃいかんね。近代文学の神経中枢とも見るべき探偵小説を読まない奴はモダンたあ云えないぜ。ナニ……読み飽きたんだ……ウハハハ。コイツは失敬失敬。さもなくとも君の商売は新聞記者だったっけね。アハハハハ。イヤ失敬失敬。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> それじゃここに吾輩が秘蔵している、もっとも</span>嶄新奇抜な探偵事実談があるが一つ拝聴してみないか。実はどこかの科学雑誌にでも投稿してやろうかと思って、腹案していたものなんだが、小手調べに君の批評を聞いてみてもいい。筋の複雑、微妙さと、解決の痛快皮肉さは恐らく前代未聞だろうと思うがね。むろん他に類例があったら、二度とお眼にかからないという、頗る非常的プレミヤム付きの……。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ナアニ。</span></p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">胡魔すんじゃないよ。今云う吾輩の脳髄論と大関係があるんだ。探偵小説というものは要するに脳髄のスポーツだからね。犯人の脳髄と、探偵の脳髄とが、秘術をつくして鬼ゴッコや</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">鼬ゴッコをやる。その間に生まれる色々な錯覚や、幻覚、倒錯観念の魅力でもって、読者のアタマを引っぱって行くのが、探偵小説の身上じゃないか。ねッ。そうだろう。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ところがだ。吾輩の探偵小説というのはソンナ有り触れた種類の筋書とは断然ダンチガイのシロモノなんだ。すなわち「脳髄ソノモノ」が「脳髄ソノモノ」を追っかけまわすという……宇宙間最高の絶対的科学探偵小説なんだ。しかもその絶対的科学探偵小説のドンドンのドンガラガンの種明かしをして、人類二十億の脳髄をアッといわせるトリックそのものが、ソックリそのまま吾輩の「脳髄論」のテーマになっているんだからスゴイだろう。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ナニ。わからない。ハハハハハ。わからない筈だ。まだ何も話していないんだからね。ハッハッ。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ああいいともいいとも。速記に取ったって構わないよ。吾輩が「脳髄論」を学位論文として正式に発表する時まで、新聞に掲載するのを待っていてくれさえすればいいのだ。何ならアトで吾輩が筆を入れてやってもいい。談話として発表するよりも吾輩の創作として発表する方が都合がよくはないか……。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> もっとも前以て断っておくが、この探偵事実談を聞いても、わかるか解からないかは保証の限りでないよ。何しろ脳髄が脳髄を追っかけまわすという、絶対、最高度の探偵小説なんだからね。解決が最初から立派についていながら、読者には絶対にわからない。ただ</span>無暗矢鱈に奇抜突飛な、幻覚、錯覚、倒錯観念の渦巻きのゴチャゴチャだけしか感じられない……かも知れないというのが、トップのトップを切った脳髄小説のミソなんだからね。ハハハハハハハ。</p><br /><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ところでだ……まず</span>劈頭第一に一つの難解を極めた謎々をタタキ付けて、読者のアタマをガアンと一つ面喰らわせてしまうのが、探偵小説の紋切型だろう。しかもその「人間の脳髄」を極度に面喰らわせ得る謎というのは、取りも直さず「脳髄」そのものに関する</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span>ソレ</span>でなくてはならぬ事が必然的に考えられて来るだろう。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 果然と</span> ……一つ脅かしておくかね。ハハハハハハ。何を隠そうその「脳髄」こそは現代の科学界に於ける最大、最高の残虐、横道を極めた「謎の御本尊」なんだ。人体の各器官の中でもタッタ一つ正体のわからない、巨大な蛋白質製のスフィンクスなんだ。地上二十億の頭蓋骨を朝から晩までガンガンいわせ続けている怪物そのものに外ならないのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 人間の脳髄と称する怪物は、身体の中でも一番高い処に鎮座して、人間全身の各器官を</span>奴僕の如く追い使いつつ、最上等の血液と、最高等の営養分をフンダンに搾取している。脳髄の命ずるところ行われざるなく、脳髄の欲するところ求められざるなし。何の事はない、脳髄のために人間が存在しているのか、人間のために脳髄が設けられているのか、イクラ考えても見当が付かないという……それ程左様に徹底した専制ぶりを発揮している人体各器官の御本尊、人類文化の独裁君主がこの脳髄様々に外ならないのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ところが、それはそれとしてここに一つ不思議な事があるのだ。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> それは</span>他事でもない、その脳髄と自称する蛋白質の固形物自身が、古往今来、人体の中でドンナ役割をつとめているのか、何の役に立っているものか……という事実を、厳正なる科学的の研究にかけて調べてみると、トドのつまり「わからない」という一点に帰着する事だ。逆にいうとこの脳髄と名付くる怪物は、古今東西の学者たちの脳髄自身に、脳髄ソレ自身のホントウの機能をミジンも感付かせていない事だ。……のみならず……その脳髄自身は、ソレ自身がトテモ一キロや二キロの物質の一塊とは思えないほどの超科学的な怪能力、神秘力、魔力を上下八方に放射して、そうした科学者たちの脳髄ソノモノに対する科学的の推理研究を、片端からメチャメチャに引掻きまわしている。モット手短かにいうと「脳髄が、脳髄ソレ自身の機能を、脳髄ソレ自身に解からせないように解からせないように努力している」とでも形容しようか。従ってその脳髄は、脳髄ソレ自身によって作り出された現代の人類文化の中心を、次第次第にノンセンス化させ、各方面に亘って末梢神経化させ、頽廃させ、堕落させ、迷乱化させ、悶絶化させつつ、何喰わぬ顔をして頭蓋骨の空洞の中にトグロを巻いているという、悪魔中の悪魔ソレ自身が脳髄ソレ自身になって来るという一事だ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> むろんこれは吾輩一流の</span>法螺やヨタじゃない。吾輩の専門の名誉にかけて断言するのだから……。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> エッ……脳髄は物を考える処だ……と云うのかい。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> そうだよ。みんなそう思っているんだよ。現代一流の科学者は勿論のこと、全世界のありとあらゆる種類、階級の人々は、プロとブルとを押しなべて皆、脳髄で物を考えているつもりで生きているんだ。ラジオも、飛行機も、相対性原理も、ジャズも、安全</span>剃刀も、赤い理論も、毒瓦斯も何もかも、この一二〇〇瓦以上、一九〇〇瓦以下の蛋白質のカタマリから生み出されたものと確信し切っているのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 成る程、人間の屍体を解剖して、脳髄なるものを覗いてみると、そうした考え方は万々間違いないように見える。大脳、小脳、延髄、</span>松果腺なんどと、無量無辺に重なり合っている、奇妙キテレツな恰好をした細胞が、やはり、奇想天外式に変形した神経細胞の突起によって、全身三十兆の細胞の隅から隅までつながり合っている。その連絡系統を研究して行くと結局、人体各部を綜合する細胞の全体が、脳髄を中心にして周到、緻密、且つ整然たる糸を引合った形になっているのだ。だから人間一切の行動を支配する精神もしくは、生命意識なるものは、脳髄の中に立て籠もっているのじゃないかしらんと考えられる。少くとも「脳髄は物を考える処」と考えて差支えないように考えられるのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> こうした考え方は現在ではもう人類全般の動かすべからざる信念……もしくは常識となってしまっているのだ。この「脳髄が物を考える処」という事実について今更めかしく疑いを起すものは、ドコを探しても一人も居ない事になっているのだ。現代の</span>燦然たる文化文物は針一本、紙一枚に到るまでも、一つ残らずこうした「物を考える脳髄」によって考え出されたものである……と演説しても「ノーノー」を叫ぶ者は一人も居ない位にアタマ万能主義の世の中になってしまっているのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ……</span></p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">然るにだ……ここで吾輩の脳髄探偵小説は、こうした世界的の大勢を横眼に白眼んだ一人の青年名探偵、兼、古今未曾有式超特急の脳髄学大博士を飛び出させているのだ。脳髄に関する従来の汎世界的迷信を一挙に根柢から覆滅させて、この大悪魔「脳髄」の怪作用……ノンセンスの行き止まり……アンポンタンの底抜けとも形容すべき簡単、明瞭な錯覚作用の真相を、煌々たる科学の光明下に曝らけ出し、読者の頭をグワ――ンと一撃……ホームランにまで戞飛ばさせている……という筋書なんだがドウダイ……読者に受けるか受けないか……。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ナニ。まだわからない……もう</span>些し聞いてみなければ……。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 何だって……空想小説じゃないかって……。</span>怪しからん……。だから一番最初に「科学探偵事実小説」と断っているじゃないか。空想なんてものをコレンバカリも取入れたら、全篇の興味がゼロになってしまうじゃないか。むろんそうだとも……初めから一分一厘ノンセンスものじゃないんだから安心して聞き給え。そんな甘物じゃない事が、その中にわかって来るんだよ。いいかい……。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ところでその青年名探偵、兼、脳髄学の大博士は、吾輩が仮りにアンポンタン・ポカン君と名付けている二十歳ばかりの美青年なんだ。いいかい……むろん実在の人物なんだよ。しかもその美青年は古今無双のいい頭を持っているにも拘わらず、非常に危険な遺伝的、精神病の発作にかかったので、この大学に入学すると間もなく、この教室の附属病院に収容する事になった。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ……ナアニ……ヨタじゃないったら……恐ろしく疑い深い読者だね君は……</span>虚構だと思うならイツ何時でも本人に紹介してやるよ。スグこの向うの七号室に居るのだから訳はない。「オイ。ポカン君……」と呼ぶと、ビックリしたように振り返る横顔がタマラなく可愛いよ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ところでこのシークボーイ……アンポンタン・ポカン君は、その遺伝発作を起して人事不省に陥ったあとで、ヤット正気を取返すと間もなく、自分の生れ故郷や、両親の名前は勿論のこと、自分自身の名前までもキレイに忘れてしまっている事を、自分自身に気が付いた。そこで取りあえず吾輩からアンポンタン・ポカン博士の名誉ある称号を頂戴している訳だが、ポカン博士自身も元来のアタマが</span>良いだけに、この事が非常に気になるらしく、毎日毎日夜も昼もブッ通しに、病室の中の人造石の床を歩るき廻って、自分の脳髄の事ばかり考えているらしいのだ。……「わからないわからない。いったい僕の脳髄は今まで何をしていたのだろう……何を考えていたのだろう」とか又は「僕の脳髄が僕の全身を支配しているのか……それとも僕の全身が僕の脳髄を支配しているのか……解らない解らない」……といったような事を口走っては、蓬々と伸びた自分の頭の毛を掻きまわしたり、拳固でコツンコツンと後頭部をなぐり付けたりしいしい、一分間も休まずに、部屋の中をグルグルと歩きまわっているのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ところが、そのうちに、ソンナ発作がダンダンと高潮して来るとポカン博士は、やがて部屋のマン中の人造石の床の上に立止まって不思議そうにキョロキョロとそこいらを見廻わし初める。そうして自分の蓬々たる頭の毛の中から、何かしら眼に見えないものを掴み出して、床の上に力一パイ叩きつける真似をする。それからその床の上にタタキ付けたものを指して、脳髄に関する演説を</span>滔々と、身振まじりに初めるのであるが、そのうちに自分の演説に感激して、興奮の絶頂に達して来ると、ツイ今しがた自分の頭の中から掴み出して床の上にタタキ付けた眼に見えない或るものを、片足を揚げて一気に踏み潰す真似をすると同時に、ウーンと眼を眩わして床の上に引っくり返ってしまう。そうして約三四十時間も前後不覚の状態に陥って、昏々と眠り続けると、又もや、アンポンタン・ポカン然として眼球をコスリコスリ起上るのだ。そうして前の通りに「わからないわからない」を繰返しながら部屋の中をグルグルと歩るきまわる。その中に又も、頭の中から眼に見えないものを取り出して足下の床の上にタタキ付ける。前後左右を見まわして、拳固を振り上げながら脳髄の演説を開始する。そうして何だか解からないものを床の上で踏み潰しては、ウーンと云って引っくり返る……というのが、この青年名探偵アンポンタン氏の日課になっているのだ。</p><br />

July 21, 2020
夢野久作ードグラ・マグラ32
<p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ◆葉書は左記へお出し下さい。</span></p><br /><br /><span><br /></span><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><br /><br /> <span>九州帝国大学医学部精神病学教授</span><br /> <span>斎藤寿八氏自室気付</span><br /><br /> <span>面黒楼万児宛</span><br /><br /><br />┌───┐<br />│ │<br />└───┘<br /><br /></p><span><br /></span><span><br /></span><br /><br /><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span>地球表面は</span></p><br /><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span>狂人の一大解放治療場</span></p><br /><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">九州帝国大学 <br /> 正木敬之氏談<br />精神病科教室 <br /></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">去る三月初旬以来、九州帝国大学精神病科本館裏手に起工されて、その附属病院の工事と共に着々進捗しんちょくしつつある「狂人解放治療場」は、過般来かはんらいその内容が厳秘中であったが、右は同科新任教授正木博士が私費を投じて開設したものである事が判明した。右に就つき正木博士は同教授室に於て、往訪の記者に対しかく語った。<br /></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 世間では今度、吾輩が九大で開始した「解放治療」を吾輩の独創だとか、</span>嶄新奇抜だとかいって騒いでいるようであるが、正直のところを云うと決して吾輩の独創でもなければ、嶄新奇抜な療法でもないのだ。すなわちこの地球表面上は、昔々の大昔の、歴史にも伝説にも残っていない以前から、狂人の一大解放治療場になっているので、太陽はその院長、空気はその看護婦、土はその賄係りに見立てられ得るのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ……といっても吾輩は別に奇矯な言辞を</span>弄しているのではない。そうした事実を断言し得る相当の理由があるから云うので、何を隠そう吾輩の「精神病研究」の第一歩はこの「地球表面上が狂人の一大解放治療場になっている」という事実に立脚していると云ってもいいのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> それは何故かというと、元来この地上に生み付けられている人間は、身分の高下、老若男女の区別を問わず、指一本でも自分の自由にならぬか、又はどこか足りないか、多過ぎるかした人間を発見すると、すぐに「</span>片輪」という名前を附けて軽蔑したり、気の毒がったり、特別扱いにしたりする事にきめている。同様に、頭のハタラキが本人の自由にならぬか、又は、頭の働きのどこか足りないか、多過ぎるかした人間を見付けると、早速、精神病患者、すなわちキチガイの烙印を押し付けて差別待遇を与える事にきめているようである。禽獣、虫ケラ以下の軽蔑、虐待を加えてもいいものと考えているらしく考えられる……が……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">然らばその精神病者を侮蔑し、冷笑している所謂、普通の人間様たちの精神は、果して、何もかも満足に備わっているであろうか。すべての人々の脳髄は、隅々までも本人の意志の命令通りに、自由自在に動いているであろうか。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 吾輩は</span>敢て云う。公平、且つ厳正な学問の眼から見ると、決してそうは思えない。それは手足の曲ったのや、眼鼻の欠け落ちたのと同様に、外から肉眼で見わける事が出来ないだけで、実際のところをいうとこの地球表面上に生きとし生ける人間は、一人残らず精神的の片輪者ばかりと断言して差支えないのである。曲ったり、くねったり、大き過ぎたり、小さ過ぎたり、又は智慧や情慾が多過ぎたり、足りなかったりする、所謂、精神的の片輪者ばかりで、押すな押すなの満員状態を呈していると考えても、断然間違いはないのである。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 早い話がなくて七癖、あって四十八癖というではないか。見っともない、下らない習慣が、いくら他人に笑われても止まない。又は出世の妨げになったり、他人に迷惑をかけたりするので、是非とも止める決心をして、神や仏に</span>願をかけたり、新聞に広告までして誓を立てても悪い癖が止められないのは取りも直さず、自分の頭が、自分の自由にならない事を実地に証明しているのではないか。自分の頭の間違っているところを、自分の意志で直す事の出来ない、精神病的発作の根強いあらわれを見せているのではないか。又は泣くまいと思ってもツイ涙が出る。</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">憤る場合でないと思ってもついムカムカッと来て前後を忘却したりするのは、やはり一時的の精神の偏りを、自分で持ち直す事が出来ないという、アタマの弱点を曝露しているのではないか。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> そのほか</span>凝り性、厭き性、ムラ気、お日和機嫌、胴忘れ、神経質、何々道楽、何々キチガイ、何々中毒、変態心理なぞの数をつくして、出会う人毎に、知るも知らぬも、多少のキチガイ的傾向を帯びていない者は無い。頭の働らきの不叶いなところを持っていない者は無い。すなわち精神病者と五十歩百歩の人間でない者は居ないのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> その証拠には、そんな連中のそうした弱点……すなわち頭の不叶いなところを指摘してやると、誰でもヒヤリとして赤面するか、青すじを立てて弁明するか、腕まくりをして喰ってかかるかする。これはキチガイが自分自身をキチガイでないと主張するのと同じ心理で、まことに馬鹿馬鹿しい極みであるが又、人情の止むを得ないところであろう。……しかもその人情の止むを得ないところを、そのままにして</span>放ったらかしておくと、そんな精神病的傾向が当り前の事のように思えて来る。況んや当世流行の紳士待遇でも与えようものならイヨイヨ病癖が増長して、イヨイヨ止むを得なくなって来る。そうしてトウトウ絶対に取り止めが出来なくなったのが、家庭悲劇や、犯罪事件となって社会に曝露する。軽いので社会的制裁、重いのになると法律の手にかかる。それでも反省出来ない、ブレーキの利かなくなったガタガタ自動車みたいな奴が、何々狂と名付けられて、精神病院に担ぎ込まれる事になるのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 誤解しては困るが、何もそれが悪いと云うのじゃない。万物の霊長諸氏を侮辱する意味で云ったのでは毛頭ないが、しかし、そんな風に生れ付いたり、習慣付けられたりしている</span></p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">所謂、紳士淑女連中が、自分のアタマと五十歩百歩の精神病患者を見るとヤタラに軽蔑したり、恐れたりする。自分だけは誰が何と云っても精神病的傾向をミジンも持たない、完全無欠なアタマの持主だと自惚れ切っているから、ツイ吾輩も冷やかしてみたくなるのだ。……そんな紳士淑女連中からアラユル残酷な差別待遇を受けている、罪も報いも無い精神病患者を弁護してみたくなるのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> すなわち、いずれにしても</span>斯様に観察して来ると、普通人と狂人の区別がつけられないのは、刑務所の中に居る人間と、外を歩いている者との区別が付けられないのと同じ事になって来るであろう。平ったく云えば赤い煉瓦に這入る程度にまで露骨でない悪党と、キチガイとを一緒にしたものが、所謂、普通人……もしくは紳士淑女という事になるであろう。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> もちろんこれは一種の暴言である。実に失礼とも無作法とも、何ともカンとも申上げようのない遺憾千万な云い草ではあるが、事実はどこまでも事実に相違ないのだから仕方がない。こうした観察点に立脚しなければ、精神病に関する</span>真個の科学的研究がやって行けないのは恰も、人間が一個の動物に過ぎないという見地に立脚しなければ、すべての医学の研究が遂げられないのと同じ事なんだから止むを得ない。もし又、万が一にも「俺ばかりはキチガイじゃないんだぞ。絶対に完全無欠な精神を持っている人間なんだぞ」という自信を持っているお方があったら、イツ何時でも吾輩の処へお出で下さいだ。そのお方は当大学の研究患者として、官費で入院さして上げる。ちょうどその式の患者が、学生の講義に必要なところだからね……。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 太陽は、これ等無限の精神病患者の大群を、地上一面に生み付けて、永久に無言の解放治療を続けている。そうするとその</span>禽獣、虫ケラ以下の半狂人である人類たちは、永い年月のうちに自然と自分たちがキチガイの大群集である事を自覚し初めて、宗教とか、道徳とか、法律とか、又は赤い主義とか青い主義とかいう御叮嚀なものを作って「お互いに無茶を止しましょう……変な真似をやめましょう」をやっている。だから吾輩もその小さな模型を作って、僭越ながら太陽氏になり代って「無薬の解放治療」を試みている。「人類全部がキチガイ」という観察点に立脚した、ホントウの科学的な精神病の研究治療を試みているのだ。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ……ナニ……その解放治療場にはドンナ種類の精神病患者を収容するのか……それはまだわからないよ。いずれ吾輩の学説……新しい精神科学の学理実験材料として差支えない患者を選み出して収容する予定にはなっているんだがね……。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ……その学説はドンナ学説……吾輩が唱え出した精神科学の内容かね。それあトテモ大変な質問だ、なかなか一朝一夕に説明し切れる訳のものじゃないよ。しかし要するに今日までの精神病の研究法を根本から引っくり返した行き方だという事は断言しておいてもいいね。まず人間の脳髄の作用から研究し直して「脳髄は物を考える処」という従来の迷信的な学説をドン底から訂正する。それからその新しい「脳髄の作用」に反映して行く精神の遺伝作用を明らかにする。そこで出来上った精神解剖学、精神生理学、精神病理学から観察診断した、最もわかり易い最も興味深い、精神病患者の標本ばかりを集めて、吾輩独特の精神的な暗示と刺戟を応用した治療法を試みてみたいと思っているんだがね。ドンナ標本が集まるか……ドンナ騒動が初まるか、吾輩自身にも予断出来ないんだよ。ハハハ……。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 但し念のためにお断りしておくが、その実験をやっている吾輩ばかりが、精神に異状の無い、太平無事のデクノ坊だと誤診されては迷惑だよ。</span></p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> あの太陽が、一旦、ギラギラと光り出して、地獄と名づくる精神病者の一大解放治療場の全面を</span>焙りまわし初めたらナカナカ止めない。いい加減なところで醤油でも附けたら……と思ってもソンナ余裕なんか持たないらしく、どこまでもどこまでもピカピカジリジリと焙り廻し続けている。それと同様に一度狂人の研究を初めた吾輩は、それ以外の事が考えられなくなった。往来で小便をし初めたのと同様に、殿様がお通りになろうが、巡査がお見えになろうが、お手討ちも罰金も覚悟の前で、根の切れるまでシャアシャアやり続けている。</p><br /><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> だから地上のほかの狂人は</span>治療るとも、吾輩の精神異状だけは永遠に全快しないだろうと思う。これだけは慥かに保証出来る。云々。</p><br /><br />

July 20, 2020
夢野久作ードグラ・マグラ31
<span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span>八</span></p><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼チャチャラカ、チャカポコチャカポコチャカポコ。あ――ア。ナント皆さん紳士や淑女よ。お立ち会い</span>衆の大勢さまよ。これが私の洋行土産じゃ。現代文化の影身に付添う。この世からなる地獄の話じゃ。鳥が囀り木の葉が茂り。花に紅葉に極楽浄土の。中にさまよう精神病者じゃ。身寄りたよりに突きはなされて。罪も報いも泣こうに泣かれぬ。キチガイ乞食のあわれな姿じゃ。ここの村里、彼処の町で。夜毎日毎に追いまくられては。石や瓦の投げ打ちされては。雨にたたかれ風に晒され。雪や氷に消え入るばっかり。そんな地獄をこの世に作った。丸い明るい天道様まで。クルリクルリと顔をば背向けて。俺は知らぬと云うたか云わぬか。ピカリピカリと笑って御座るよ……チャカポコチャカポコ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼あ――ア。ピカリピカリと笑って御座るが。それはまだしも気楽な地獄じゃ。昼夜不断の電燈</span>瓦斯燈。唯物科学の文化の光りが。明るく光れば光って来るだけ。暗くなるのが精神文化じゃ。金じゃ女じゃ。権利じゃ義務じゃと。手段撰ばぬ悪智慧比べじゃ。道理外れた生存競争。電車自動車ソラ飛行機じゃと。縦横無尽に行き交い飛び交う。人の運命一寸先だよ。暗に隠るる秘密の扉じゃ。連れて来られた老若男女は。狂気本気の区別を問わない。馬鹿怜悧も一列平等。ドンと蹴込んでピタリと閉じたら。タッタ一呑み文句を云わせぬ。音も</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">香もなく落ち行く先だよ。</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">娑婆の道理や人情の光りが。影も映さない暗黒世界じゃ。鉄筋煉瓦やセメント造りの。科学知識のこの世の地獄じゃ。中に重なるキチガイ地獄の。上に在るのが親切地獄で。次が軽蔑、冷笑地獄じゃ。下は虐待、暗殺地獄の。底は何やらわからぬ地獄じゃ……チャカポコチャカポコ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼あ――ア。あとは何やらわからぬ地獄の。次に並ぶはモ</span>一つスゴイよ。これは何でもわかった地獄じゃ。おのれ彼奴が正気の俺をば。こんな処へ投げ込みおるかと。歯噛み、身もだえ、地団駄、踏んでも。踏めば踏む程、親切地獄じゃ。それでも止めねば虐待地獄じゃ。あとは無念の白骨地獄で。化けても出られぬ奈落へ抜けます……チャカポコチャカポコ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼あ――ア。化けて出られぬ奈落へ抜けるよ。そんな危い地獄の扉が。もしも</span>本当にそこいら中に。あるとなったらさてどうなるか。お立会い衆は無論の事だよ。政府当局、天下の学者。知識階級の誰かれ問わない。血あり涙のある方々が。知らぬ顔して捨ててはおけまい。古い川柳に座敷の牢屋で。薬飲むにも油断がされぬと。(註に曰く――座敷牢薬をのむに油断せず――柳樽――)御座りまするはお江戸の昔じゃ。況して況んや近代文化の。科学知識の進歩の中でも。人の脳髄、心の正体。何が何やらわからぬために。精神病学研究し方が。八方塞がり昔のままだよ。贋のキチガイ真実のキチガイ。ハッキリ区別も出来ない癖に。ほかの医学の体裁真似して。治療診察なんどというては。四角四面の病院作って。器械標本、薬に書物と。並べ飾って威張っているなら。こんな地獄が出来るは当然。これを防ぐが目下の急務じゃ。そんな病院見当り次第に。タタキ潰すが何より急務じゃ……スカラカ、チャカポコ、チャカラカ、チャカポコ。チャカポコチャカポコチャカポコチャカポコ……</p><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 九</span></p><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼チャチャラカ、ポコポコ。スカラカ、ポコポコ……</span>扨も左様なイカサマ病院。キチガイ地獄が出来ないように。防ぐ工夫があるかというたら。タッタ一つの手段があります。しかもなかなか大きな仕事じゃ。どこか気候と景色のよろしい。交通便利な離れた島へ。ザット一千万円かけて。かくいう私が新案工夫の。デッカイ精神病院建てます。そこへ研究試験所つけます。患者を無料で入院させます。地獄なんぞが出来ないように。解放治療というのをやります。これも私の新案工夫じゃ。すなわち正しい精神科学の。正しいキチガイ病気の治療じゃ。薬使わず手術もしませぬ。鉄の鎖や、石箱、鉄箱。袖無襯衣なぞ一切使わず。ありとあらゆる精神病者を。広い処へ追い放しにして。一番自然な正しい治療を。しようというのが解放治療じゃ。いわば精神病者の牧場じゃ。キチガイ患者の極楽世界じゃ。奇妙キテレツ珍妙無類の。世界初めの精神病院。むろん誰でも参観随意じゃ。ドンナ素敵な観物になるかは。蓋を開けねば私もわからぬ。何から何まで新発明だよ。スカラカ、チャカポコ。スカラカ、チャカポコチャカポコ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼あ――ア。何から何まで新発明だよ。いずれその</span>中発表しますが。世界の学者が一人も知らない。キチガイ病気の出て来る原理じゃ。しかも頗る簡単明瞭。ステキ滅法愉快な学理を。そこで実地の試験にかけます。診察予防が絶対不可能。薬も無ければ手術も出来ない。キチガイ病気の正体調べて。診察治療が出来るとなったら。トテモ評判大したものだよ。世界に人種が数ある中で。日本人種は見上げたものだよ。正義人道尊ぶ国だよ。精神科学の先進国だと。云わせたいのが私の願いじゃ……チャカポコチャカポコ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼あ――ア。云わせたいのが私の願いじゃ。なれど何しろ一千万の。金というたら大したもんだよ。私が親から引譲られた。</span>田地田畑でんちでんぱた、貯金や証文。古い褌お金に換えても。やっと半分そこらのものだよ。あとは政府のお助け仰いで。それにも一つ皆様方の。清い尊いお志を。たより縋りに遣りたい考え。五厘一銭、藁一筋でも。多寡は厭わぬ願人坊主じゃ。頭たたいて頂きまする……チャカポコチャカポコ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼あ――ア。アタマたたいて頂戴しまする。なれど、そういう願人坊主が。やはり「キの字」の</span>片割らしいぞ。眼付き風付き何やらおかしい。非人乞食に劣らぬ姿で。道のほとりに</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">鞄を投げ出し。駄声はり上げ木魚をチャカポコ。昼の日中に外聞晒す。しかも文句が常識外れた。世界文化の千万円じゃの。耳に聞こえず眼にさえ見せない。人の心の狂いを直すの。古今独歩の研究なんどと。途方途轍もない事並べて。寄附を集めるイカサマ坊主じゃ。そんな古手にかかると思うか。要らぬ処で道草喰うたぞ。早く行こうと仰言るならば。これは</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">如何さま尤も千万。道理至極じゃスカラカ、チャカポコ。頭たたいてお詫びをしまする……チャカポコチャカポコ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼あ――ア。頭たたいてお詫びをしまする。そもやそもそも一体全体。こんなスカラカ、チャカポコ頭が。身の程知らない木魚をたたいて。頼み手も無い金にもならない。要らぬ赤恥、</span>天日にさらげる。事の起りはキチガイ地獄じゃ。文明社会の裏面に拡がる。無茶と野蛮の底抜け地獄じゃ。筆も言葉も木魚も及ばぬ。むごさ、せつなさ、悲しさ辛らさを。底の底まで見て来たお蔭で。こちらの頭が少々変テコ。これをこのまま棄ててはおけぬと。思い込んだが因果のはじまり。これを助ける方法手段を。あれよこれよと思案のあげくが。精神病者を無料で預る。デカイ病院建てるが第一。それを建てるにゃ皆様方の。輿論のお力借りねばならぬ。又は一厘一銭たりとも。無駄に使わぬ思案の果だよ。思い付いたる乞食の姿が。お眼に障わったお詫びの印じゃ。今のキチガイ地獄の歌をば。</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">印刷に起した斯様な書物を。お立ち会い衆へお頒ちしまする。お金は要らないお願いしまする。持って帰ってお読みなされて。これはどうやら真実らしいぞ。寄附をしようかと思うたお方や。</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">扨は私の一生仕事の。狂人救済事業の中味を。もっと詳しく調べてみたい。又は世界の漫遊みやげの。眼先変ったキチガイ話や。家の祟りや血統の障りや。生霊、死霊の怨みやなんぞが。人の心を狂わせ惑わす。スゴイ因果の因縁話を。聞いてみようかそれとも又は。何か大勢集まる場所で。そんな話をやらせて見たらば。奇抜な余興になるかも知れぬと。</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">思召したらお手数ながら。ここに挟んだ葉書が一枚。これにお名前お所番地。それとこれなる頁の終りに。止めましたる宛名を書いて。ぽんとポストにお願いしまする。願うところはこの世の中に。こんな事実があります事を。向う三軒両お隣りや。どなたこなたの噂の種に。語り伝えて下さりませよ。すれば今云うキチガイ地獄や。人類文化の裏面の秘密が。</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">否が応でも世間へ広まる。悪い事する精神病院。キチガイ地獄を片端なぐりに。タタキ潰せと輿論が高まる……チャカポコチャカポコ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼そこで政府も黙っておれない。棄てておけない重大問題。社会事業の急務というので。私が投げ出す財産全部の。五百余万のお金を基本に。精神病者を無料で預かる。国立精神病院建てます。到る処の精神病者の。生産過剰の緩和を初める……チャカポコチャカポコ……</span></p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼人に忘られ世に忘られて。狂い</span>藻掻いて生命を終る。あわれな精神病者が助かる……ポコチャカポコチャカ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼それかばかりかその病院で。研究し出したキチガイ病気の。治療のし方が世間に広まる。世界各地のキチガイ地獄が。一つ残らず引っくり返って。ありとあらゆる精神病者の。</span></p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">嬲り殺しが止みますならば。こんな本懐至極は御座らぬ……ポコポコチャカチャカ……</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼あ――ア。こんな本懐至極は御座らぬ。そこで成る程貴様の仕事は。実に</span>道理千万至極じゃ。奇特、感心、立派な了簡。俺が付いてる心配するなよ。ウント踏張り勉強やらかせ。狂人地獄をスカラカ、チャンまで。タタキ潰せよフレ――やフレーと。お賞めなされて下さるならば。私の喜び天井知らずじゃ……チャカチャカポコポコポコポコチャカチャカポコポコ……</p><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> 十</span></p><span><br /></span><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> ▼スチャラカ、チャカポコ。チャチャラカ、チャカポコ。あ――ア。さても皆さん相済みませぬ。御用、お急ぎ、散歩の足をば。変な姿や奇妙な文句で。お引止めして気の毒千万。なれどつらつらおもんみまするに。三千世界を流るる時間が。何万、何億、何兆年とも。知れぬ無限の時間の</span>中なら。五十、七十、百まで生きても。アッという間の一生涯だよ。何が何やらわからぬまんまに。会うて別れて生まれて死に行く。数え切れない人数の中だよ。今日が只今この道傍で。お眼にかかるも何かの御縁じゃ。お許しなされて下さりませよ。よしやこのままお別れしても。残る名残りがスカラカチャカポコ。もしもこの後世間の噂や。雑誌新聞、小説なんぞで。キチガイ話を御覧になったり。又はホンマの精神病者を。通り縋りに御覧になったら。思い出しても下されませよ。月の光りや太陽の輝やき。星の光りも掻き消すばかりに。眼眩めくモダーン文化や。又は博愛仁慈の光明。正義道理のサーチライトも。昔ながらに照らさぬ世界じゃ。地獄以上のキチガイ地獄に。音も香もなく消え行く先だよ。広さ深さも無限の暗の。底に青ずみ漂う血の海。上にさまよう陰火の焔は。罪も報いも無いまま死に行く。精神病者の無念の思いじゃ。聞いて聞こえぬ怨みの数々。聞いた心がクドキの文句じゃ。念仏代りの阿呆陀羅経だよ。無調法なる木魚に合わせて。チョット御機嫌伺いまする。げどう――さア――えエ――もオ――んンン。キチガイ――イ――地獄ウ。</p><p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal">――ヘイ。御退屈様――</p><span><br /></span>
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<p style="font-size:16px;color:#333333;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;font-weight:normal;text-align:justify;hyphens:auto" data-flag="normal">前ちゃんが気になった本を朗読していきます。聞きながら本の内容を理解して、勉強していきましょう。もちろん、分からないところはいつでも聞いてください。</p> - How often does this podcast release new episodes?
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